老年精神医学雑誌 Vol.16-6
論文名 代謝面からみた高齢者における心身障害の相関― 総論的に ―
著者名 平井俊策
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,16(6):647-652,2005
抄録 高齢者の疾患では身体疾患も精神症状を呈しやすく,時にはこれが前景となることがあるが,これは高齢者の身体の構成成分が高齢者特有な変化を示すことが基本にあることをまず述べた.各論ではそれぞれの全身代謝障害がどのような精神症状を呈するかについて詳しく解説されるので,ここではおもな精神症状の側からその原因となりうる全身代謝障害にはどのようなものがあるかという切り口から,心身の相関について概説した.
キーワード 高齢者疾患の特徴,全身代謝障害,精神症状,心身相関
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論文名 高齢者の脱水と精神症状
著者名 清水昌彦,鳥羽研二
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,16(6):653-656,2005
抄録 高齢者は生理機能の低下などさまざまな要因により脱水を引き起こしやすい.脱水により身体症状だけでなく精神症状をきたすことが多く,診断には注意深い観察が必要である.本稿では高齢者における脱水の特徴や注意点などについて概説する.
キーワード 脱水,精神症状,輸液
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論文名 高齢者の血糖値異常と精神症状
著者名 橋爪潔志
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,16(6):657-665,2005
抄録 加齢に伴う血糖値の上昇は連続性を有し,生理的変化である.血糖値是正を目的に介入すると精神症状を示す症例は有意差をもって増加する.加齢に伴う高血糖値は高次中枢機能維持のための適応現象のひとつと考えられ,今後,糖尿病治療にこの点も加味されるべきである.
キーワード 2型糖尿病(type 2 diabetes mellitus),認知機能(cognition),メタボリック症候群(metabolic syndrome),精神活動(mental activity),適応応答(adapting response)
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論文名 高齢者のカルシウム代謝異常と精神症状
著者名 藤田拓男
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,16(6):666-671,2005
抄録 カルシウムは細胞の情報伝達に重要な役割を果たし,とくに高齢者に多いカルシウムの欠乏とともに骨・血液・細胞内液の間の著明な濃度落差が失われ,細胞内遊離カルシウム(〔Ca〕i)の増加が神経細胞死の最終共通経路となる.〔Ca〕iの上昇はミトコンドリアの機能障害,過酸化物の生成を起こし,細胞死につながる.脳血管障害のような急性疾患から,慢性変性疾患としてアルツハイマー病やプリオン病まで,カルシウム不足が関連するものが多い.
キーワード カルシウム不足,副甲状腺ホルモン,細胞内遊離カルシウム,アルツハイマー病,酸化ストレス
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論文名 高齢者の電解質代謝異常と精神神経症状
著者名 木村時久,太田耕造
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,16(6):672-680,2005
抄録 加齢により下記に示すような体液の恒常性の維持機構に変化が生ずる.この結果,種々の要因により低Na血症が発生しやすく,精神神経症状を生ずる.
 1.体水分量減少
 2.糸球体濾過率(GFR)の減少
 3.尿濃縮力低下
 4.抗利尿ホルモン分泌増加
 5.心房性Na利尿ホルモン分泌増加
 6.アルドステロン分泌低下
 7.自由水クリアランス低下
 8.水中毒症状,脳浮腫症状
キーワード hyponatremia, SIADH, central pontine myelinolysis, vasopressin, atrial natriuretic hormone
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