老年精神医学雑誌 Vol.16-5
論文名 高齢者の人格障害の臨床的特徴
著者名 東儀瑞穂,中村亮介,林 直樹
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,16(5):527-533,2005
抄録 高齢者の人格障害の臨床的特徴について概説した.高齢者で特異的なことは,加齢による器質的・心理社会的変化等のさまざまな影響を受けていることである.したがって臨床場面では,身体的状況・精神状態・心理社会的状況などを包括的にとらえることが必要とされている.治療的アプローチでは,多方面からの情報を総合して患者を把握し,時間をかけてその適応を援助する姿勢が重要である.高齢者の人格障害についての研究は,若年者と比較するとまだ不十分であるのが実情であり,さらなる研究が必要である.
キーワード 高齢者,人格障害,臨床的特徴
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論文名 高齢者の人格障害の診断基準
著者名 守田嘉男
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,16(5):534-537,2005
抄録 精神医学での人格障害の定義について,老年期精神障害に含まれる高齢者の人格障害における妥当性を考察した.すなわち,高齢の人格障害例についてICDあるいはDSMの診断基準の適用可能性について検討したが,先行研究には少数ながら確かな高齢者人格障害の記載があり,器質性人格障害とともに診断基準を見直す必要性について述べた.
キーワード 高齢者人格障害,加齢,性格変化,脳器質性,診断基準
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論文名 高齢者の妄想性人格障害
著者名 磯野 浩,坂本里江子,須貝佑一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,16(5):538-545,2005
抄録 高齢者の妄想性人格障害について,青年期または成人早期から認められる狭義の人格障害と,高齢になって認められた広義の人格障害に分け,それぞれの症例を呈示して概説した.妄想性人格障害の特徴は,他人の動機を悪意あるものと解釈するといった,広範な不信と疑い深さであり,この障害に対して自我親和的であるといった特徴から,自ら治療を求めることは少ない.しかし,高齢になり介護を要する状態となったときには,本人の意思に反して医療機関を受診しなければならなくなるケースもある.このような患者の対応をするときには,老年期の心理特性を十分理解することが重要であることを述べた.
キーワード 人格,人格障害,妄想性人格障害,一般身体疾患による人格(パーソナリティ)変化,高齢者
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論文名 高齢者の強迫性人格障害
著者名 和田 信,村井俊哉
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,16(5):545-553,2005
抄録 高齢者における強迫性人格障害は,高齢期を迎えて生じるさまざまな環境の変化や孤独・不安などが背景となって,対人関係や活動に支障をきたして顕在化しうる.強迫性人格と強迫症は旧来連続したものとしてとらえられていたが,近年の実証研究から,両者はさしあたり別のものとして把握されている.長期経過については実証的所見に乏しいが,強迫性人格障害は,人格障害のなかで比較的予後がよいとされる.加齢に伴って強迫性人格障害の有病率が低下するかどうかは明らかになっていない.治療では,精神療法・社会的支援・薬物療法などの必要性を総合的に検討し,多角的にアプローチすることが重要である.
キーワード 強迫性人格障害,強迫,人格障害,高齢者,高齢,加齢
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論文名 高齢者の反社会性人格障害
著者名 井関栄三
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,16(5):554-559,2005
抄録 高齢者の人格障害は,老年期以前からあった狭義の人格障害,人格の偏りが老年期に至って顕在化した広義の人格障害,器質性人格障害が含まれる.青年期から存在する反社会性人格障害が老年期に至って減少するとしても,元来の性格傾向が,老年期の生物学的要因と社会・心理学的要因に修飾されて,人格障害として顕在化することがある.さらには,頭部外傷後遺症やピック病などで,反社会性人格障害類似の人格変化をきたすことがある.
キーワード 人格障害,高齢者,反社会性人格障害,精神病質,器質性人格障害
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論文名 高齢者の自己愛性人格障害
著者名 小野和哉
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,16(5):560-566,2005
抄録 高齢者において自己愛の問題はどのような様相を呈してくるのであろうか.自己愛性人格障害の概念は精神分析の臨床から生まれ,その歴史は新しい.DSMによる診断基準を厳密に当てはめると,わが国において該当症例の診断は必ずしも容易ではない.そこで本稿では,自己愛の問題と加齢との関係,自己愛性の障害を背景にした高齢者の精神障害の様相などを提示し,高齢者の精神障害の診断,治療において自己愛のもつ意味を明らかにしてみたい.
キーワード 高齢者,加齢,自己愛,人格障害,治療的接近
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論文名 高齢者の人格障害の薬物療法
著者名 落合結介,笠原洋勇
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,16(5):567-571,2005
抄録 人格障害の根本的な薬物療法はまだ十分には確立されておらず,対症療法として行われているのが現状である.とくに高齢者の人格障害では,その発生過程において加齢による性格や人格の変化や尖鋭化,身体機能の低下などが関与している場合もある.そのため,高齢者の人格障害の薬物療法においては,高齢者のパーソナリティについても留意したうえで方針を立てることが重要であり,薬物を安易に追加,増量することは避けるべきである.
キーワード 高齢者,人格障害,薬物療法,性格変化,尖鋭化
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論文名 高齢者の人格障害の心理療法と社会的サポート
著者名 藤澤大介,白波瀬丈一郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,16(5):572-576,2005
抄録 人格障害を併存している患者は,そうでない患者と比較して治療脱落率が高いことが知られている.主観的な苦痛,社会機能障害,治療に対する意欲などを考慮して介入のポイントを決める必要がある.弁証法的行動療法の有効性も指摘されつつある.実際の対応においては,治療者自身の患者に対する陰性感情に配慮し,施設においては,スタッフも含めた集団力動に注意が必要である.本稿では人格障害の高齢者に接する際の実際上の工夫についても述べた.
キーワード 人格障害・パーソナリティ障害(personality disorder),精神療法・心理療法(psychotherapy),弁証法的行動療法(dialectical behavior therapy)
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