論文名 | 高齢者虐待問題研究の歴史と展望 |
著者名 | 田中荘司 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(2):165-171,2005 |
抄録 | 今日,高齢者の虐待問題は国内のみならず世界各国共通の克服すべき課題である.2002年2月に国連のアナン事務総長は,高齢者虐待の記者発表を行い,世界的規模の統計はないが各国の統計を引用しながら,尊厳保障のために各国は虐待を解消すべくそれぞれの国において取り組むことが必要であることを強調している.わが国は敬老社会で「敬老の日」を祭日とする国であるが,高齢者の「声なき声」に真剣にこたえなければならない.電話相談の経験の一例として,信頼していたわが子から人生の晩年に虐待を受けているが,死期が近づいたこのときにその悩みをもちながらあの世に逝きたくないと泣きながらの相談があった. |
キーワード | 高齢者,虐待,家庭内,施設内,防止法 |
論文名 | 権利擁護センターの活動に現れる高齢者虐待と支援― 大阪後見支援センターの活動から |
著者名 | 大國美智子,川並利治,村上徹子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(2):172-178,2005 |
抄録 | 平成15年度,大阪後見支援センターに現れた高齢者虐待は,明らかな虐待に限定すると,地域福祉権利擁護事業のなかでは34件,権利擁護相談事業のなかでは30件であった.いずれの場合も経済的虐待が多く,身体的・心理的虐待であっても,その背後に経済問題が絡んでいた.経済的虐待防止のための直接支援が中心であるが,その他の虐待についても,早期発見や自立生活支援のための地域ネットワークの構築を支援することと,医師・弁護士・社会福祉士などの専門職による技術的後方支援を行っている. |
キーワード | 高齢者虐待,経済的虐待,早期発見,地域ネットワーク,高齢者虐待防止法 |
論文名 | 福祉施設の視点からみた高齢者虐待と支援 |
著者名 | 柴尾慶次 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(2):179-186,2005 |
抄録 | 高齢者虐待に関する福祉施設の取組みは,受け皿機能を十分に果たすことと同時に,介入のための技術や知識を伝達し,地域での取組みを支援する機能,役割がある.また,入り口的な議論から,介入のための知識,技術,倫理観などとともに,出口にどのようなシステムが必要なのかを明確にする必要がある.とくに,シェルター・ネットの構築や虐待者,被虐待者,援助者への回復プログラムは,手つかずの領域であり,法制度が整備されても,専門職が介入していくうえでは必須と思われる. |
キーワード | 一貫した予防システム,介入のプログラム,虐待防止センター,シェルター・ネット,回復プログラム |
論文名 | 高齢者虐待― 医療・福祉現場から事例と対応 |
著者名 | 井上幸代 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(2):187-193,2005 |
抄録 | 重度痴呆デイケアを併設している精神科診療所での身体的・心理的虐待の事例を呈示し,医療・福祉の関係者が関与した経過を報告する.このデイケアは,複数の専門職の目があることで虐待の発見は比較的早いが,次の対応の段階では,種々の事情を考慮しつつケースバイケースとなっているのが現状である.本例では,デイケアの利用が中断することを危惧し,つねに介護者ほかの同意のもと,介護者の精神的負担を軽減できる方法を検討した. |
キーワード | 高齢者虐待,在宅介護,痴呆デイケア,精神科診療所 |
論文名 | 高齢者虐待と家族― 高齢者本人へのアンケート調査と家族関係危険因子評価表について |
著者名 | 金子善彦 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(2):194-204,2005 |
抄録 | 高齢者本人にアンケート調査を行い,本人記入49の有効例(本人記入群)(ほかに,聴き取り群として31例)を得た.本人記入群で虐待ありの17例(34.7%)を,虐待者に対する過去の不適切対応歴有無の2群に分けると,娘が虐待者に含まれている被虐待者は,不適切対応歴がない群よりもある群で多くみられた(聴き取り群を加えた29例については有意差あり).家族関係の危険因子と思われる項目を通説するにあたり,その整理過程で1つの表ができた.これは,一種の危険因子評価表として虐待の予防,発見,介入,経過の理解・判断等をより効果的に行うための補助的道具として使える可能性がある. |
キーワード | 高齢者虐待,不適切処遇・対応歴,虐待の世代間連鎖,家族関係危険因子評価表,介護 |
論文名 | 高齢者虐待― 法的側面からの検討 |
著者名 | 加藤悦子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(2):205-211,2005 |
抄録 | 高齢者の権利を擁護するための法としては,刑法,DV防止法,人身保護法,老人福祉法や民法,成年後見法や地域福祉権利擁護事業の活用などが考えられる.保健・医療・福祉面からの支援とともに,関連する法律を必要に応じて柔軟に活用できるような虐待防止システムの整備が早急の課題である.本稿では,高齢者虐待防止法の制定に向け,「対象行為」「虐待対応機関」「通報義務と守秘義務」「立ち入り権限」の4項目について検討した. |
キーワード | 高齢者虐待防止法,司法,介入 |
論文名 | 高齢者虐待への対応の現状と課題 |
著者名 | 高ア絹子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(2):212-218,2005 |
抄録 | 「家庭内における高齢者虐待の全国調査」(平成15年度,厚生労働省)によると,被虐待者全体の約8割が認知症(痴呆性)高齢者を占めたことや,生命に危険がある状態のあった者の割合が約1割であったことなど,また適切な対応がなされず,問題の改善・解決が困難であったこと等,高齢者虐待の深刻な状況が明らかになった.本稿では,80歳代の男性が息子から暴力を受け,短期入所で保護された事例への援助プロセスをとおして,高齢者虐待への対応と対策,法制度の整備などにおける課題を述べる. |
キーワード | 高齢者虐待,援助のプロセス,在宅介護,虐待の要因,法制度の整備 |