老年精神医学雑誌 Vol.16-10
論文名 わが国における認知症ケアの実態
著者名 本間 昭
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,16(10):1107-1112-1280,2006
抄録 現在までの認知症ケアの政策的動向を簡単にまとめ,尊厳をキーワードとした認知症ケアを高齢者ケアのモデルと位置づけた平成18年度からの新たな介護保険制度における認知症ケアにふれた.さらに,国内で報告された認知症をキーワードとする文献および日本認知症ケア学会で報告された発表を概観した.まとめとして,政策と教育と研究の経験年数の短さと双方の連携が不十分のため,現場では混乱が生じていること,国は現場教育を政策事業の一環とし積極的に取り組んでいるが,それを受けられないケア提供者が多いこと,今後はリーダーを育成するための具体的でわかりやすい指針に沿った現場教育の強化と実際の現場での教育の具体化が必要であることを指摘した.
キーワード 認知症,ケア,高齢者,尊厳,QOL
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論文名 アルツハイマー病の初期・中期のケア
著者名 北川公子,菅原峰子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,16(10):1113-1119,2006
抄録 啓発活動の効果や専門外来の増加,初期診断における精度の向上などにより,いままで以上に初期段階でのアルツハイマー病の診断が可能になり,専門職者は,以前よりも軽症の当事者に出会うようになった.とくに初期では,告知や介護家族による受容の問題,薬物療法・非薬物療法の選択などさまざまな課題があるが,一貫して,症状の進行遅延に向けた繊細で積極的なケアの開発と提供が求められる.さらにこの時期のケアには,将来の終末期への見通しももって展開される必要がある.
キーワード アルツハイマー病,進行遅延,告知,介護家族,非薬物療法
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論文名 前頭側頭葉変性症のケア
著者名 繁信和恵,池田 学
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,16(10):1120-1126,2006
抄録 前頭側頭葉変性症はその特徴的な症状から,最も介護や処遇の困難な認知症といわれている.しかし,保たれる機能と障害される機能の乖離が鮮明で,保たれている機能を強化するとともに,障害された機能である症状さえも,それを適応的な行動に変容させ,QOLを高めるケアを実施することが可能である.ここでは筆者らがこれまで実践してきた前頭側頭葉変性症の実際のケアについて紹介する.
キーワード 前頭側頭葉変性症,ケア,前頭葉症状,常同行動
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論文名 レビー小体型認知症の臨床症状と最近の治療・ケア
著者名 丸井和美,井関栄三
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,16(10):1127-1132,2006
抄録 本稿では,レビー小体型認知症(DLB)にみられる臨床症状の特徴を,臨床診断基準と自験例に基づいて述べる.そのうえで,これらの臨床症状に対して最近行われている治療と必要なケアについて述べる.DLBの臨床症状は,認知機能障害のほか,特徴的な視覚認知障害とパーキンソニズムよりなり,ADLおよびQOLの障害をきたしやすい.このことから,DLB患者には精神面と身体面の両者に対する治療とケアが欠かせないものとなる.
キーワード レビー小体型認知症,認知機能障害,視覚認知障害,パーキンソニズム,治療とケア
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論文名 認知症の身体ケア
著者名 遠山洋一,柏木秀幸
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,16(10):1133-1138,2006
抄録 超高齢化社会を迎えるわが国では,今後認知症患者数もさらに増加し,その終末期の身体ケアは社会的に重要な問題である.嚥下困難症に陥った場合の栄養管理は現在,内視鏡的胃瘻造設(PEG)が主流であり,在宅ケアに多く用いられている.また認知症終末期に問題となってくる感染症は誤嚥性肺炎であり,重篤化すると致命的となることがしばしばである.認知症終末期には十分なインフォームド・コンセント(IC)は困難であり,患者の人格を尊重し,また予後を見据えながら,後見人との話し合いで治療やケアの方針が決定される.
キーワード リビング・ウィル,PEG,誤嚥性肺炎,MRSA,IC,QOL
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論文名 認知症のリハビリテーションと地域活動
著者名 旭 俊臣,篠遠 仁,畠山治子,辻 央生,小川喜胤
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,16(10):1139-1148,2006
抄録 認知症のリハビリテーションとして,BPSDおよびADL障害が軽度である場合は,回想法,ROによるデイケアが有効である.障害が重度化すると,精神神経症状,運動機能障害,内臓疾患を合併する.これらの合併症に配慮した全人的ケアとしての入院デイケアは,重度化した認知症患者に有効である.認知症の長期ケアのためには,リハビリ病院,精神科病院,一般病院の病病連携と認知症ケアネットワークの構築が重要である.
キーワード 入院デイケア,全人的ケア,認知症ケアネットワーク,病病連携
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論文名 認知症の権利擁護とケアのあり方
著者名 斎藤正彦
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,16(10):1149-1154,2006
抄録 認知症ケアにおける人権擁護システムの現状を概観した.成年後見制度に関しては任意後見,補助といった本人の意思によって使われる制度の利用者数が伸び悩んでいた.地域福祉権利擁護事業の利用者数は順調に増加しているものの,地域間格差が著しかった.意思能力が不十分な認知症高齢者の医療同意に関しては制度的な裏づけが欠如しており,そのことが医療上の機会均等を疎外している可能性を示唆した.
キーワード 認知症,人権,成年後見,地域福祉権利擁護事業
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論文名 終末期ケアと死後における家族への介入
著者名 笠原洋勇,伊藤達彦,青木公義,津村麻紀
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,16(10):1155-1161,2006
抄録 アルツハイマー病や認知症の終末期ケアに携わる家族は,長期間にわたる負担と消耗を強いられてきている.配偶者や家族の負担を少しでも減らす社会的サービスが一般化しているが,本人と家族,本人とケアラー,家族とケアラー間の理解は必ずしも一致していないのが現状である.互いの感情的,心理的疎通が壁になり,誤解が生じ,非道徳的,非倫理的ケアにつながらないようにするにはどうしたらよいか.また,家族のなかでケアできていないという喪失体験,患者が死に至る喪失体験は,配偶者や家族の二重の喪失体験となって苦しむことになる.ケアする配偶者や家族への死後のケアは十分に手がつけられていない問題である.
キーワード アルツハイマー病,終末期ケア,道徳,倫理,家族のケア
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