論文名 | BPSDの総論 |
著者名 | 工藤 喬,武田雅俊 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(1):9-15,2005 |
抄録 | 痴呆に伴う精神症状および行動異常は,中核症状である認知機能障害より,むしろ介護の障害となるが,これらを総称してBPSDとよばれるようになった.BPSDの症状は多彩であるが,幻覚・妄想,攻撃,不穏などが最も介護者を悩ます.BPSDの発現機序として,セロトニン系,ノルアドレナリン系などの神経伝達物質の異常が指摘されており,治療として非定型抗精神病薬やSSRIが推奨されている.BPSDの対策で最も重要なことは,介護者への支援である. |
キーワード | アルツハイマー病,セロトニン系,ノルアドレナリン系,非定型抗精神病薬,SSRI |
論文名 | 抑うつと無気力(アパシー) |
著者名 | 小林祥泰 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(1):16-23,2005 |
抄録 | BPSDのなかで最も頻度が高く早期からみられるのはアパシーと抑うつである.抑うつと診断されている痴呆とくに血管性痴呆のなかに実際はアパシーの要素が強い例がかなり含まれている可能性がある.アルツハイマー型痴呆における抑うつではうつ病既往や家族歴が多く,また,ある程度進行すれば自我の認識も乏しくなるため疾患自体による抑うつは従来考えられているほど高くないと思われる.ここでは痴呆におけるアパシーの重要性を強調したい. |
キーワード | 血管性痴呆,血管性抑うつ,アパシー,前頭葉,やる気スコア |
論文名 | 攻撃性と焦燥 |
著者名 | 服部英幸 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(1):24-29,2005 |
抄録 | 攻撃性(aggression)と焦燥(agitation)はともに,痴呆患者に高率に認められる症状であって管理・介護が困難である.疾患別では前頭側頭型痴呆に多くみられる.前頭葉,側頭葉の機能障害,血流低下を認めるとする報告が多い.関与する神経伝達物質としてセロトニン,ドーパミンが最も重要と考えられる.攻撃性に関係する遺伝子異常も明らかになりつつある.薬物治療では抗精神病薬,抗てんかん薬以外に認知機能を改善するアセチルコリンエステラーゼ阻害薬にも効果が期待できる. |
キーワード | アルツハイマー病,前頭側頭型痴呆,セロトニン,ドーパミン,アセチルコリンエステラーゼ阻害薬 |
論文名 | 幻覚・妄想 |
著者名 | 谷向 仁,谷向 知 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(1):30-35,2005 |
抄録 | 幻覚・妄想は,BPSDのなかで最も多くみられる症状であり,幻覚では幻視,妄想では物盗られ妄想が最も多くみられる.BPSDの薬物療法などを考えるとき,その生物学的背景を明らかにすることは重要であり,神経病理学,神経生化学,神経画像,遺伝子解析などの手法が有力である.幻覚に関しては,おおよその神経基盤が周知されてきているが,妄想に関しては,より詳細な臨床評価に基づく研究が必要である. |
キーワード | 痴呆性疾患,BPSD,幻覚・妄想,生物学的背景,臨床評価 |
論文名 | 徘徊,落ち着きのなさ |
著者名 | 堀 宏治ほか |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(1):36-43,2005 |
抄録 | 痴呆,とくにアルツハイマー型痴呆(ATD)患者における徘徊,落ち着きのなさ(徘徊)について生物学的に考察した.最初に,認知機能と行動心理学的症候について筆者らの考え方を述べ,次に,徘徊の定義について総説を行い,定量的手段を用いて定義した筆者らの研究を紹介した.最後に,徘徊に関して痴呆初期における前頭葉機能障害,その後期における頭頂葉機能の低下の関与を筆者らの研究から提示し,あわせて,徘徊に関する責任病巣に関する総説を行った. |
キーワード | 徘徊,行動心理学的症候,前頭葉機能,頭頂葉機能 |
論文名 | 睡眠関連症状 |
著者名 | 三上良章,足立浩祥,武田雅俊 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(1):44-52,2005 |
抄録 | 痴呆の睡眠関連症状は頻度も高く,介護者や家族に大きな負担を与える.睡眠関連症状は多様であり,夜間不眠だけではなく,昼間の眠気や睡眠覚醒リズム異常・夜間異常行動などがある.睡眠覚醒リズムの振幅低下に対して,睡眠衛生指導や光治療が有用である.深睡眠・レム睡眠が記憶の固定や強化に関連しており,睡眠の質の低下が認知機能障害増悪の修飾因子になるかもしれない.レム睡眠行動異常症とレビー小体型痴呆との関連が注目されている. |
キーワード | 睡眠覚醒リズム,睡眠衛生,光療法,レム睡眠行動異常症,レビー小体型痴呆 |
論文名 | せん妄 |
著者名 | 西口直希,前田 潔 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(1):53-57,2005 |
抄録 | せん妄における生物学的知見について概説した.せん妄の神経伝達系の変化としては,アセチルコリン神経系の活性低下,ならびにドーパミン神経系の活性亢進が考えられている.さらに,せん妄にはストレス反応性の神経内分泌系,免疫系の変化が複合的に関与していると思われる.そのほか,脳血管障害後の発症から,せん妄の関連部位として右大脳半球優位を重視する説を中心に,脳形態学的研究についても触れた. |
キーワード | せん妄,アセチルコリン,ドーパミン,HPA axis,右半球優位性 |