論文名 | 地域における痴呆ケアモデル;家族・ケアスタッフの介護負担軽減の視点から |
著者名 | 今井幸充 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,15(8):911-920,2004 |
抄録 | 地域における痴呆ケアモデルとは,痴呆ケアの理論や概念を地域で実践するための基本になるもので,社会資源を有効に活用しながら痴呆性高齢者を支援するための総合的サポート体制の構築である.痴呆ケアの実践は,痴呆性高齢者のアドボカシーとエンパワメントを基本とし,アセスメントとケアプラン,家族サポート,地域介護支援サービスとの連携を主軸に展開されなければならない.それゆえ,地域痴呆ケアモデルは,保健・医療・福祉の3領域の包括的なケアモデルが整備されなければならない.痴呆は認知,行動,ADLが障害される病態であることから,そのプライマリ・ケアには地域のかかりつけ医がかかわるのが自然であり,「地域医療(かかりつけ医)」の役割は大きい.「地域医療」と「在宅介護支援センター」が地域包括システムの窓口となり,両者の密接な連携体制を基本とした痴呆ケアシステムが地域で中核的な役割を果たすことが望ましい. |
キーワード | 痴呆,痴呆ケアモデル,地域包括的ケア,地域医療,在宅介護支援センター |
論文名 | 地域ケアにおける医療の役割;尾道方式の新・地域ケアの構築と痴呆ケア |
著者名 | 片山 壽 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,15(8):921-928,2004 |
抄録 | 高齢者介護研究会で痴呆を疾病として整理したことで,痴呆ケアモデルの標準化を目指す議論はあらたな展開を迎えることになる.住み慣れた生活圏域で自立支援を必要とする高齢障害者の生活障害のなかで,痴呆に特化したというよりは,主治医機能を中核とした痴呆にも対応可能なあらたな高齢者医療介護システムの構築が必要である.尾道市では既存の地域資源をケアマネジメントで再編した標準化の可能な「新・地域ケア」の概念を提唱している. |
キーワード | 痴呆ケア,ケアマネジメント,主治医機能,地域資源,システム化 |
論文名 | 地域分散型ケアは家族・スタッフの介護負担軽減に役立つか |
著者名 | 宮島 渡 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,15(8):929-935,2004 |
抄録 | 1.痴呆性高齢者の特性を無視した一方的なケアが混乱と介護負担をつくってきた. 2.痴呆性高齢者の「これまでの生活」から「これからの生活」につなげるためには,小規模な環境で「関係」と「生活」に配慮した専門的,継続的ケアが必要である. 3.そして,施設は「社会問題の引き受け,抱え込み,保護収容型」から「社会問題の地域自力解決支援型」にかわるべきである. 4.したがって,小規模多機能拠点のメリットとデメリットは施設のデメリットとメリットでそれぞれ相殺し,お互いの“いいとこどり”という相乗効果の生きるシステムとして「地域分散型ケア」がある. |
キーワード | 介護者との関係障害が行動障害を生む,24時間365日の不断ないケア,自宅と施設のもつ限界,小規模な支援を地域で行う,「小規模」を支援する「大規模」 |
論文名 | 家族・スタッフの介護負担軽減のためのケアマネジャーの役割 |
著者名 | 小山 剛 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,15(8):936-942,2004 |
抄録 | 1.介護負担は,支える介護体制の脆弱さから,介護者への身体的負担が大きい. 2.現在の介護がいつまで続くかわからないことから先行き不安があることと,痴呆についての理解不足から精神的負担が大きい. 3.現在の介護保険では在宅生活の場合使用したサービス費用が積み上げられていくために費用負担が重い. 4.ケアマネジャーは本人・家族のエンパワメントを高めることやインフォーマルサービスの活用,さらにはあらたなサービスシステムを創造することが使命である. |
キーワード | 見守りと介護,連続性,意識転換,エンパワメント,あらたなシステムづくり |
論文名 | 宅老所・グループホームはケアスタッフの介護負担を軽減するのか |
著者名 | 川原秀夫 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,15(8):943-948,2004 |
抄録 | 宅老所やグループホームでケアするからケアスタッフの介護負担軽減になるとはいえない.介護負担軽減になる可能性があるのは,介護のあり方が真に利用者中心に転換され,ケアのよき循環を起こしたときである.流れ作業の業務優先の土台に1人ひとりに寄り添うことを接木しようとしても,ケアの悪しき循環を起こす.本来のグループホームケアが求められる.一方,注目されている小規模多機能サービス拠点の場合はケアスタッフの介護負担軽減はさらに困難である. |
キーワード | 業務優先のケアから利用者優先のケアへ,ケアのよき循環と悪しき循環,こころに寄り添うこと,真の利用者中心,本来の宅老所グループホームケア |
論文名 | 痴呆介護の負担軽減に向けたシステムの検討;呆け老人をかかえる家族の会愛知県支部の活動から |
著者名 | 尾之内直美 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,15(8):949-955,2004 |
抄録 | 痴呆介護で最も重要なことは介護者のもっている潜在的な力を引き出すことと考える.そのためには介護者の心理状態に応じた支援が必要であり,同じ立場にある介護者からのピアカウンセリングが効果的である.愛知県支部では独自に作成した「介護者の心理ステップ」をもとに,ピアカウンセリングと介護者のエンパワメントを基本にした活動を行ってきた.今後はこれらの効果を検証し,介護者支援施策として確立することが課題である. |
キーワード | 痴呆,介護負担,介護者支援,介護施策 |