論文名 | I :老年期神経疾患の精神症状;進行性核上性麻痺 |
著者名 | 水澤英洋 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,15(7):807-809,2004 |
抄録 | 進行性核上性麻痺は垂直性眼球運動障害,項部ジストニー,歩行障害などの特有なパーキンソニズムを主徴とする神経変性疾患であるが,思考過程の緩慢化,前頭葉障害様症候,もの忘れ,人格障害などからなる認知機能障害も高率にみられ,アルツハイマー病に代表される皮質性痴呆に対して皮質下性痴呆とよばれている. |
キーワード | 進行性核上性麻痺,皮質下性痴呆,思考過程緩慢化,前頭葉症候 |
論文名 | I :老年期神経疾患の精神症状;大脳皮質基底核変性症 |
著者名 | 森松光紀 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,15(7):810-816,2004 |
抄録 | 大脳皮質基底核変性症は大脳皮質と基底核に神経細胞変性を示す緩徐進行性疾患である.症例集積の初期の段階では,本症は前頭頭頂葉症状,無動・筋強剛を一側優位性に示し,遅れて前頭・皮質下型痴呆を示すという特徴から臨床診断は容易と考えられた.しかし,一次性進行性失語,ピック病様の前頭葉型痴呆,あるいは前頭側頭型痴呆を早期から示す症例の報告が増え,現在のところ確実な臨床診断基準は存在しない.したがって,多彩な精神神経症状を示す初老期・老年期神経変性疾患ではつねに本症を鑑別すべきである. |
キーワード | 大脳皮質基底核変性症,前頭・皮質下型痴呆,前頭葉型痴呆,前頭側頭型痴呆,一次性進行性失語 |
論文名 | I :老年期神経疾患の精神症状;透析患者にみられる精神神経症候 |
著者名 | 北岡建樹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,15(7):817-823,2004 |
抄録 | 慢性透析患者にみられる精神・神経の症候は,末期腎不全・尿毒症により生じる精神・神経症候に加えて,長期透析治療の合併症,腎不全の原因疾患と偶発症,透析治療操作や使用薬物,治療に伴う精神心理的な反応などが複雑に重なりあって出現する.尿毒症性脳症,透析不均衡症候群,透析脳症,薬物性脳症などがあり,なかでも腎機能廃絶に伴う薬物代謝の副作用による精神神経障害や透析操作に伴う抑うつ反応などに注意する必要がある. |
キーワード | 尿毒症性脳症,透析不均衡症候群,透析脳症,薬物性脳症,抑うつ反応 |
論文名 | I :老年期神経疾患の精神症状;傍腫瘍性神経症候群 |
著者名 | 加藤丈夫 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,15(7):824-832,2004 |
抄録 | 悪性腫瘍が神経系に直接浸潤・転移しなくても,精神・神経症状をきたすことがある.これを悪性腫瘍の遠隔効果といい,病態として自己免疫機序が考えられている.悪性腫瘍の遠隔効果による神経障害を傍腫瘍性神経症候群といい,多彩かつ特徴的な神経症状をきたす.ここでは,傍腫瘍性小脳変性症と傍腫瘍性感覚性ニューロパチーについて述べる.多くの場合,悪性腫瘍は小さく,本症を強く疑い画像診断等を行うと,悪性腫瘍を発見できる.したがって,臨床医がこのような精神・神経症状について熟知することは,悪性腫瘍の早期発見・患者の生命予後にとってきわめて重要である. |
キーワード | 傍腫瘍性神経症候群,傍腫瘍性小脳変性症,傍腫瘍性感覚性ニューロパチー,抗Yo抗体,抗Hu抗体 |
論文名 | II :神経疾患治療薬による精神症状;抗パーキンソン病薬による精神症状 |
著者名 | 近藤智善,広西昌也 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,15(7):833-839,2004 |
抄録 | パーキンソン病でみられる薬物性精神症状(幻覚・妄想)の要因には長い罹病期間,重い重症度,低い日常生活活動や運動能,痴呆合併,日中の傾眠など,病気の進行と関連した症状が多い.その病態には,ドーパミン神経系,非ドーパミン神経系の障害が複合して関与しているとみられる.治療的にも抗パーキンソン病薬の減量やドーパミン受容体遮断薬など古典的な対策以外に,非定型抗精神病薬や中枢性コリンエステラーゼ阻害薬の適用が検討されつつある. |
キーワード | パーキンソン病,抗パーキンソン病薬,幻覚,妄想,非定型抗精神病薬 |
論文名 | II :神経疾患治療薬による精神症状;不随意運動治療薬による精神症状 |
著者名 | 平井俊策 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,15(7):840-845,2004 |
抄録 | 不随意運動は多彩であるが,その治療薬には抗精神病薬が最も多く,これに抗不安薬が併用されることが多い.さらに抗てんかん薬,抗コリン薬,ドーパミン遮断薬,β遮断薬,筋弛緩薬などが不随意運動の種類に応じて使用されるが,作用機序からはドーパミンD2受容体の遮断作用を有する薬物が多い.これらの薬は抗パーキンソン病薬と逆の作用があるといえ,その使用による副作用としてパーキンソン症候群惹起作用が多い.最も重篤な副作用は悪性症候群であり,これはD2受容体遮断力価と相関するとされ,この種の薬の使用にあたって十分に注意すべき症候群である. |
キーワード | 不随意運動治療薬,抗精神病薬,ドーパミンD2受容体遮断薬,パーキンソン症候群,悪性症候群 |
論文名 | II :神経疾患治療薬による精神症状;副腎皮質ステロイドによる精神症状 |
著者名 | 伊井裕一郎,葛原茂樹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,15(7):846-850,2004 |
抄録 | 副腎皮質ステロイドによる精神症状は,うつ,躁などの気分障害(mood disorder)と,せん妄,幻覚などの精神病様症状(psychosis)に分けられる.その病態として,視床下部―下垂体―副腎皮質系やモノアミン系などとの関与が示唆されている.また,副腎皮質ステロイドによる認知・記憶障害も指摘されており,海馬障害との関連性が推測されている. |
キーワード | 副腎皮質ステロイド,精神症状,認知・記憶障害,視床下部―下垂体―副腎皮質系,海馬 |
論文名 | II :神経疾患治療薬による精神症状;インターフェロンによる精神症状と神経症状 |
著者名 | 相原令子,栗原照幸 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,15(7):851-854,2004 |
抄録 | (1)インターフェロンの副作用としての精神症状には,うつ状態,せん妄,不安,躁状態,幻覚がある. (2)神経内科的副作用には記憶障害,失調症,パーキンソニズムがある. (3)副作用のメカニズムとしては,サイトカイン産生,コルチゾル増加,間脳の興奮性亢進などがあげられ,さらにカテコールアミンの増加によって受容体感受性低下を招きうつ状態をきたす. (4)副作用が多いので,注意して使用し,とくに自殺に至らないように早期に対処することが重要である. |
キーワード | インターフェロン,うつ病,不安,記憶障害,パーキンソニズム |