老年精神医学雑誌 Vol.15-6
論文名 高齢者の前頭葉機能の神経心理学的評価
著者名 村松太郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,15(6):687-692,2004
抄録 高齢になると頭が固くなると俗にいわれている.そして頭が固いというのは,前頭葉機能低下を表す一般的な表現でもある.では高齢になると前頭葉機能が低下するということになるのだろうか.この問いをめぐって,代表的な前頭葉機能検査であるウィスコンシンカード分類検査(WCST)の最近の研究をとりあげ,評価における問題等について論じた.
キーワード ウィスコンシンカード分類検査,前頭葉機能検査
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論文名 アルツハイマー型痴呆における前頭葉機能障害
著者名 堀 宏治,冨永 格,小西公子,中嶋純洋,金 廣一,鹿島晴雄
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,15(6):693-699,2004
抄録 アルツハイマー型痴呆(ATD)患者における前頭葉機能障害について,行動心理学的症候(BPSD)の観点から総説した.認知機能障害は適切なテストバッテリーにより把握できる症状であり,BPSDは外界からの刺激を処理し,行動として表出する際に認められる症状であり,症状としての把握の仕方の違いに由来する差違であると考察した.ATDのBPSDは徘徊症状と関係するものであり,ATDの病初期の段階では前頭葉の機能低下と関係するものと考察した.
キーワード アルツハイマー型痴呆,徘徊,前頭葉機能,行動心理学的症候
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論文名 前頭側頭型痴呆における前頭葉機能障害
著者名 池田 学
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,15(6):700-706,2004
抄録 前頭側頭型痴呆(FTD)の人格変化や行動異常の最大の特徴は,前頭葉,側頭葉,基底核の損傷による症状が,また前頭葉症状のなかでも穹窿面,眼窩面,内側面の症状が,渾然一体となって出現してくる点にあるといえる.前頭葉は視床,基底核,扁桃体などの皮質下核と直接,間接に相互の線維連絡を有し,複数の独立した並列回路を形成していると考えられている.これらの回路が病期によって比重をかえながら障害される結果,FTD特有の前頭葉機能障害が出現するということもできる.
キーワード 前頭側頭型痴呆,前頭葉,人格変化,被影響性の亢進,常同行動
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論文名 血管性痴呆における前頭葉機能障害
著者名 丸山哲弘
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,15(6):707-718,2004
抄録 血管性痴呆は病態,病巣,病型からみて多様で不均一である.したがって,本疾患の高次脳機能障害も多様である.しかし,従来血管性痴呆における高次脳機能障害の特徴は,アルツハイマー病との比較から,記憶障害は軽度で,主たる障害は前頭葉機能であると報告されている.この知見を検証するため,血管性痴呆の病型のなかで最も頻度の高い皮質下性血管性痴呆に焦点をあて,伝統的に前頭葉機能検査として用いられているWisconsin Card Sorting Test,Verbal Fluency Test,Trail-Making Test,Stroop Testを用いた研究論文を系統的にレビューしてみた.血管性痴呆がアルツハイマー病に比べて前頭葉機能障害を有意に認める報告は約半数であった.前頭葉機能は他の高次脳機能よりも階層性として上位にあるため,局在性よりも脆弱性としてとらえられる.したがって,痴呆における前頭葉機能は認知機能の全体的な枠組みのなかで評価されなければならない.この意味で,現在のところ血管性痴呆における前頭葉機能障害の特異性については明らかではなかった.
キーワード 血管性痴呆,多様性,皮質下性血管性痴呆,前頭葉機能,神経基盤
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論文名 高齢者におけるワーキングメモリの障害
著者名 坂村 雄
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,15(6):719-724,2004
抄録 高齢者のワーキングメモリ障害について諸家の見解を概観した.加齢により,ワーキングメモリ課題の成績低下が認められるという点では,諸家の意見はおおむね一致している.ワーキングメモリ障害に関連する基本的な理論としては,処理資源仮説(processing resources hypothesis),抑制障害(dis-inhibition),処理速度の低下(speed of processing)などがあるが,統一した見解には至っていない.
キーワード 記憶障害,ワーキングメモリ,加齢,二重課題,リーディングスパン・テスト
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論文名 高齢者における展望的記憶の障害
著者名 梅田 聡
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,15(6):725-730,2004
抄録 展望的記憶とは,未来に行うことを意図した行為の記憶であり,日常生活を営むうえで必要不可欠な能力のひとつである.本稿では,高齢者の展望的記憶の障害について焦点をあて,それを理解する理論的枠組みについて解説したのち,これまでに行われたさまざまなアプローチによる研究結果を概観し,手がかりに対する処理やモニタリング能力の低下などの観点から検討する.最後に,正常な加齢と初期段階の痴呆に伴う展望的記憶の障害についてもふれる.
キーワード 展望的記憶,回想的記憶,前頭葉機能,痴呆症
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論文名 高齢者における遂行機能障害
著者名 田渕 肇
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,15(6):731-736,2004
抄録 加齢による遂行機能障害については,遂行機能の概念の複雑さや評価の困難さもあり,いまだはっきりとした結論には至っていない.そこで,まず遂行機能の概念を整理し評価における問題点などを説明する.次に近年報告された健常者を対象にした研究を紹介しながら,高齢者における遂行機能障害を検討する.
キーワード 遂行機能,評価,高齢者,前頭葉
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論文名 前頭葉機能障害のリハビリテーション
著者名 三村 將
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,15(6):737-747,2004
抄録 前頭葉機能障害の存在は他の高次脳機能障害に対する認知リハビリテーションを行う際の阻害要因となる.しかし,最近は前頭葉の関与が大きいと考えられる諸機能,すなわち目標の設定,計画の立案,計画の実行といった遂行機能の各要素や展望記憶などについても,積極的なリハビリテーションアプローチが模索されている.患者個人の状態に応じた外的援助を行い,可能なかぎり患者自身の自立と内的自己コントロールへと移行していくことが重要である.
キーワード 遂行機能,認知リハビリテーション,展望記憶,問題解決,作動記憶
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