論文名 | 痴呆性疾患に対する心理療法;その可能性と限界 |
著者名 | 黒川由紀子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,15(5):483-488,2004 |
抄録 | 本稿では,RO,回想法,音楽療法等,痴呆性疾患に対する心理療法を概観し,痴呆性疾患を有する患者に対する心理療法の課題を検討すると同時に,心理療法の意味を論じた.心理療法の課題として,痴呆症の患者のもつ方向性の異なるテーマを指摘し,患者のニーズや必然性に導かれて統合的に心理療法を適応することをあげた.心理療法の意味として,心理的成熟の過程の促進,心理的な見立てに基づき痴呆症による障害を補うこと,家族や重要な他者との関係性の再生をあげた. |
キーワード | 痴呆性疾患,心理療法,成熟の過程,重要な他者との関係性,統合的心理療法 |
論文名 | 高齢者を対象とする個人音楽療法の実際 |
著者名 | 北本福美 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,15(5):489-496,2004 |
抄録 | 痴呆性疾患を有し,言語的なコミュニケーションが困難となった高齢者とも,音楽という前+非言語的な媒介を用いた交流は可能である.個人のニーズに見合った音楽の査定(選曲・曲想・場の設定・音色選定・音楽と個人の関係の理解など)を十分行い,個人の参加意思を確認しながら進めることでスピリチュアルな側面への働きかけの可能性も含めて効果があることを,2事例をとおして考察した. |
キーワード | 音楽療法,個人セッション,痴呆性疾患,サイコソーシャルアプローチ,スピリチュアルなケア |
論文名 | 痴呆性高齢者のグループ心理療法のなかの音楽療法 |
著者名 | 藤野園子,宮本典子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,15(5):497-503,2004 |
抄録 | (1)3年余にわたる会員制デイケアにおける音楽療法グループの動向についていくつかの事例の経過を追い,心理療法としての音楽療法のあり方を検討した. (2)さまざまなニーズを抱えた高齢者グループにおける,音楽を媒体としたコミュニケーションの豊かな可能性を論じた. (3)痴呆性疾患に対する音楽療法の効果については,定量的な評価方法が定まっておらず,痴呆性疾患に対する音楽療法の有効性を確立するうえにおいて今後の課題となっている点を指摘した. |
キーワード | 会員制デイケア,痴呆性高齢者,グループ心理療法,音楽療法 |
論文名 | 痴呆性高齢者のグループを対象とした芸術療法 |
著者名 | 松岡恵子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,15(5):504-510,2004 |
抄録 | 痴呆性高齢者の集団に対する芸術療法について,それがどのような目的で行いうるかという観点から考察した.芸術療法の目的としては,(1)患者の内面を理解する,(2)認知面へのリハビリテーション,(3)情動の賦活・解放,(4)患者同士・家族同士のつながりを深める,(5)生活にリズムを与える,などが考えられる.これらの目的の根底には,患者の生活の質の向上があると考えられた. |
キーワード | アルツハイマー病(AD),絵画・造形療法,認知リハビリテーション,Quality of life (QOL) |
論文名 | 痴呆性疾患を対象とした回想法;グループホーム入居を自ら決断した一事例の心理的プロセスを支えた回想法 |
著者名 | 落合真弓,斎藤正彦 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,15(5):511-517,2004 |
抄録 | 回想法はアメリカの精神科医,Butler Rによって提唱された高齢者に対する心理療法の技法であり,わが国でも回想法の効果に関する報告が,多数みられるようになった.しかし,現在までのところ回想法の効果について確立したエビデンスがあるとはいいがたく,統計的分析に対して,心理療法として個別事例に関する研究の重要性を指摘する声もある.筆者らは,精神科・内科クリニックに併設された会員制デイケアにおいて,比較的軽度な痴呆性疾患をもつ高齢者を対象に,心理療法的介入を行ってきた.本稿では,このデイケアの会員である1人の女性の事例を紹介し,その心の軌跡と回想法グループが果たした機能について考察する. |
キーワード | 回想法,グループ,痴呆性疾患,デイケア,ピアサポート |
論文名 | 痴呆性疾患を対象とした認知リハビリテーションプログラム |
著者名 | 松田 修 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,15(5):518-524,2004 |
抄録 | 本稿では,筆者が行っている病初期の痴呆患者とその家族を対象としたメモリートレーニングの実践を紹介しながら,痴呆性疾患を対象とした認知リハビリテーションの可能性と限界を考察した.認知機能プロフィールに基づいて作成した個別プログラムによって,認知機能の機能回復および生活障害の緩和の可能性が示唆された.また,自尊心や意欲の向上,病気への認識の変化など,精神療法としての意味合いも少なくないことが示唆された.しかしながら,認知機能の機能回復の効果には個人差が大きく,また,効果の持続もむずかしい.効果的なプログラムの開発や治療機序の解明など課題は多く,今後のさらなる研究が必要である. |
キーワード | 認知リハビリテーション,メモリートレーニング,アルツハイマー病,認知機能プロフィール |