老年精神医学雑誌 Vol.15-4
論文名 高齢者神経症性障害の概念の変遷と国際疾病分類
著者名 大森健一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,15(4):369-374,2004
抄録 高齢者の神経症性障害は,その年代特有の脳器質性疾患やうつ病に比すると注目されることは少なく,また臨床のレベルで神経症的症状しかもたない症例に出会うこともそう多くない.しかし,在宅高齢者には少なからぬ潜在例が存在すると考えられる.とくに不安,抑うつ,心気症状の混入する非定型例が多いことに注目して,診断,治療を進めることが重要である.DSM-IVを中心にその点について述べた.
キーワード 高齢者,神経症,不安障害,心気状態,抑うつ状態
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論文名 高齢者神経症性障害の疫学とリスクファクター
著者名 竹内龍雄
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,15(4):375-380,2004
抄録 高齢者の神経症性障害の疫学調査では,不安障害は若年者より少なく,性比では女性が多い.有病率の低下の理由としては,感情反応性の低下,感情統制力の増大,心理学的免疫などが考えられる.リスクファクターとしては,女性,低い社会経済的地位,家族歴,外的統制(性格),などの脆弱性因子と,慢性身体疾患や機能障害などによる現在のストレス,対人ネットワークの狭さなどがあげられる.身体表現性障害については,低く見積もられすぎている可能性があり,より正確な調査が必要である.
キーワード 神経症性障害,高齢者,リスクファクター,不安障害
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論文名 高齢者神経症性障害の精神療法
著者名 丸山 晋
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,15(4):381-387,2004
抄録 高齢者の神経症性障害は,老年人口の5〜10%にみられるという.これに対する精神療法は,十分確立しているとはいいがたい.筆者はSchulte Wの「交通的精神療法」などを紹介しながら,高齢者神経症性障害に対する精神療法を論述し,あわせて家族精神療法,集団精神療法の可能性にも言及した.
キーワード 高齢者,神経症性障害,精神療法
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論文名 高齢の神経症者に対する薬物療法
著者名 中村 純
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,15(4):388-393,2004
抄録 高齢者の神経症者に対する薬物療法について概説した.高齢者では吸収,代謝,分布,排泄などの過程および受容体レベルでの生理学的機能の低下により体内動態が変化し,薬物動態学,薬力学などに影響が起こる可能性がある.その結果,若年者と同量・同力価の薬物が投与されても高齢者のほうが血中濃度の上昇率が高く,排泄時間が延長することがある.一方,向精神薬は脂溶性であることから血中濃度は低下しやすいが消失半減期が延長する傾向を示す.このように向精神薬の薬物動態は複雑である.そのために効果や副作用の発現に過大な影響を及ぼすことがある.またより細かく検討すれば遺伝薬理学などにも変化が起こっている可能性もあるが,向精神薬の効果そのものに個体差が大きく,薬物が高齢化という生理学的変化に最も影響する因子としては肝機能および腎機能の変化が考えられる.
キーワード 高齢者,神経症,薬物動態,薬力学,遺伝薬理学
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論文名 高齢者全般性不安障害の臨床
著者名 黒木俊秀
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,15(4):394-400,2004
抄録 全般性不安障害(GAD)は,高齢者の不安障害のなかでは最も多く,うつ病を高率に併発する.身体化症状を呈しやすく,また身体疾患の合併とも深く関連することから,老年期医療においてGADを早期発見し適切に管理していくことの意義は大きいと思われる.ところが,GADの概念や診断基準自体が明確さを欠くことから,それを高齢者GADに適用するには限界がある.高齢者GADに対する薬物療法も十分な検討がなされていない.
キーワード 全般性不安障害,高齢者,DSM-IV,大うつ病,身体化
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論文名 高齢者パニック障害の臨床
著者名 平島奈津子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,15(4):401-406,2004
抄録 高齢者パニック障害の疫学,臨床学的特徴,鑑別診断,治療(薬物療法,認知行動療法)について,現在知られている知見をレビューし,自験例を呈示して,高齢者パニック障害の臨床における特徴や留意点について若干の考察を加えた.高齢者パニック障害はより若い世代に比べて有病率が低く,また,実証研究がほとんどないため,より若い世代における研究知見を参照せざるをえない現状がある.
キーワード パニック障害,高齢者,有病率,うつ病,治療
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論文名 高齢者強迫性障害の臨床
著者名 小林聡幸
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,15(4):407-414,2004
抄録 高齢者の強迫性障害はまれであり,また,必ずしも神経症の範疇に収まるか疑問もある.若年期に発症した強迫性障害が高齢期に至っても持続している場合と,老年期になってはじめて発症した場合とがある.後者の場合,器質的要因の評価が必要であるが,他方,若年期に強迫症状の既往があったり,強迫傾向を示していることも多い.高齢者では「知りたがり(need to know)」の強迫が特徴的だが,基本的に若年者と病像が異なるとはいいがたい.治療も副作用や合併症を勘案して選択すべきだが,若年者と異なるものではない.
キーワード 強迫性障害,高齢者,選択的セロトニン再取り込み阻害薬,認知行動療法
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論文名 高齢者心気障害の臨床
著者名 中村 敬,樋之口潤一郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,15(4):415-422,2004
抄録 心気障害の診断および老年期との関係について最近の見解を概観した.次いで4症例を呈示して臨床特徴および老年期の生活状況との関連について考察した.高齢者の心気症状は多様な病態に出現しうるため,症例ごとの特徴をよく踏まえ,それに応じた治療を構想する必要がある.疾病恐怖的な心気障害に対しては,森田療法などの精神療法が高齢者においても有用である.
キーワード 高齢者,心気症,心気障害,不安障害,精神療法
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