論文名 | アセチルコリン系賦活療法のその後の進歩 |
著者名 | 中村重信 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,14(5):523-530,2003 |
抄録 | アルツハイマー病に対するわが国での唯一の治療法はアセチルコリン系を賦活するドネペジルによる治療法である.しかし,その後,他のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬(ガランタミンなど)やニコチン性受容体を賦活する治療薬の探索が進められている.ニコチン性受容体賦活療法はアセチルコリン系の賦活以外に,アミロイドβタンパクの線維化を防止したり,神経細胞死の予防というアルツハイマー病予防の面をも兼ねているので,期待されている. |
キーワード | アセチルコリン,アセチルコリンエステラーゼ阻害薬,ドネペジル,ガランタミン,ニコチン性受容体,アミロイドβタンパク |
論文名 | Aβとコレステロール代謝からみたスタチン系薬物による治療 |
著者名 | 道川 誠,柳澤勝彦 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,14(5):531-538,2003 |
抄録 | アルツハイマー病発症機構とコレステロールの関係に関心が寄せられているのは,アポリポタンパクE4が強力な危険因子であること,疫学研究によって高コレステロール血症が危険因子であること,コレステロール降下薬(スタチン)服用が予防効果をもつこと,等が示されたためである.しかし,この両者の関連およびメカニズムについては依然不明な点が残っている.本当にスタチン服用によるコレステロール代謝調節によってアルツハイマー病発症を抑制できるのか,その理由はなぜか.社会的関心も影響も大きいだけに早急に結論をだすべき課題である. |
キーワード | アルツハイマー病,高コレステロール血症,スタチン,HDLコレステロール,アミロイドカスケード,アミロイドβタンパク |
論文名 | 抗炎症薬による治療の試みの現況 |
著者名 | 秋山治彦 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,14(5):539-544,2003 |
抄録 | 多くの統計学的調査が,非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)の長期服用でアルツハイマー病(AD)の発症が減ることを示している.AD脳病変で生じている慢性炎症の抑制がその機序として想定されているが,最近,一部のNSAIDsが培養細胞によるAβx-42産生やAPPトランスジェニックマウス脳へのAβ沈着を低下させることが明らかになり,AD治療薬の開発に結びつくのではないかと期待されている. |
キーワード | γ-セクレターゼ, Aβ産生,神経炎症,COX,治験 |
論文名 | 女性ホルモンによる治療の試みの現況 |
著者名 | 岩佐弘一,細田哲也,本庄英雄 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,14(5):545-555,2003 |
抄録 | エストロゲンが脳機能の維持,修復に対して有効であることを示唆する基礎的報告が集積している.エストロゲンがアルツハイマー病(AD)に対して有効であるか否かということに関して,現在のところ,予防的には有効であるということはほぼ明らかにされたが,治療に関しては,いまだ論争中である.本稿ではエストロゲンのADに対する予防的効果および治療的効果に関して検討するとともに,今後臨床応用が期待されるselected estrogen receptor modulator(SERM),non-feminizing estrogen J 861について言及する. |
キーワード | エストロゲン,神経保護作用,アルツハイマー病,SERM,非女性化エストロゲン |
論文名 | Aβワクチンによる治療の現況 |
著者名 | 田中稔久,武田雅俊 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,14(5):556-561,2003 |
抄録 | アルツハイマー病に対してアミロイドβタンパク(Aβ)を免疫するワクチン療法が開発されてきた.モデルマウスでの検討から,この療法は脳内Aβ沈着を有意に抑制し,認知機能の改善を促進していることが判明した.その作用機序として,AβのN末端に対する抗体が結合してミクログリアが除去する仮説と,中枢内のAβが抗Aβ抗体やその他の親和性物質によって血清内にクリアランスされる仮説が報告されている.ヒト臨床治験においては副作用のため中止されたが,より安全性の高いさらに改良されたワクチンによる治療法の開発が望まれるところである. |
キーワード | アルツハイマー病,アミロイドβタンパク,免疫療法,ワクチン,抗体 |
論文名 | Aβ生成の抑制を目的とした治療法開発の現況 |
著者名 | 瓦林 毅,東海林幹夫 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,14(5):562-566,2003 |
抄録 | アルツハイマー病(AD)の原因としてアミロイドβタンパク(Aβ)の脳内蓄積が考えられている.そのためAβの産生抑制はADの有望な治療法である.Aβの代謝にかかわる3つのセクレターゼのうち,β-セクレターゼはBACE1であることが同定された.γ-セクレターゼはPS-1,PS-2を含むcomplexであり,α-セクレターゼはadamalysin familyが有力な候補である.いまだ臨床に耐えうる薬物は開発されていないがセクレターゼの解明が進むとともに選択的な阻害薬の開発が進められている. |
キーワード | プレセニリン,セクレターゼ,アミロイド,lipid rafts |
論文名 | アルツハイマー病に対するその他の治療の試みの現況 |
著者名 | 浦上克哉,谷口美也子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,14(5):567-569,2003 |
抄録 | 薬物療法としてNMDA(N-methyl-D-aspartate)オープンチャンネル阻害薬,モノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害薬とビタミンE,イチョウの葉エキス,漢方療法,BPSD(behavioral and psychological symptoms of dementia)に対する治療などのさまざまな角度からの治療的アプローチについて概説した.非薬物療法については,回想法,音楽療法について,標準化の試みと客観的な評価を行った報告を紹介した. |
キーワード | NMDA, MAO-B阻害薬,ビタミンE,イチョウの葉エキス,BPSD,非薬物療法 |