老年精神医学雑誌 Vol.14-4
論文名 高齢者の犯罪の特徴と問題点
著者名 山上 皓
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,14(4):407-412,2003
抄録 犯罪行為に走る高齢者は,もともと犯罪傾向を有していて高齢化した者と,高齢に至ってはじめて犯罪行為を行う者とに二分されるが,老年期犯罪の特徴は後者の群にみられる.老年初犯者の犯罪には,老化に伴う家庭内葛藤等環境要因と生物学的要因とが複雑に作用し合っている.近年,高齢者による窃盗や強盗が増加を示しているが,高齢者の生活環境が悪化していることと,一般に,暦年齢に比して心身の老化の進行が遅くなったことが,その背景にあると思われる.
キーワード 老年期犯罪,老年司法精神医学,老年初犯者,家庭内葛藤
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論文名 高齢者の運転能力と事故
著者名 三村 將,三品 誠,風間秀夫
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,14(4):413-423,2003
抄録 高齢者の運転安全性を検討するため,簡易運転シミュレータ(タスクネット社製AC110)を16歳から80歳以上までの1,700人の健常者に施行した.運転シミュレータ成績に関する加齢の影響は男女で差がみられ,ことに男性では50歳代までは成績不良な被験者は少ないが,60歳代以降では急激に成績低下するケースが目立った.さらに,痴呆の疑い(軽度認知障害)と考えられる3症例の運転シミュレータ成績もあわせて解析した.実際の運転安全性との関連からは,反応のスピードより正確さが重要と思われ,ことにハンドルとブレーキ・アクセルの複合的操作の正確さが低い症例は要注意と考えられた.
キーワード 運転,痴呆,認知機能,加齢,自動車,注意
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論文名 高齢者のアルコール依存の特徴と問題点
著者名 高柳陽一郎,五十嵐禎人,梅野 充
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,14(4):424-429,2003
抄録 高齢化が進行しているわが国では,高齢者におけるアルコール依存症がより重要な問題となりつつある.高齢のアルコール依存症者は若年者とは違った身体的・心理的背景を有しているため,臨床像も若年者とは異なったものである場合が多い.したがって,その診断や治療の際にもそういった高齢者特有の問題に対しての配慮が必要であると考えられる.高齢者においても,アルコール依存症の治療は,集団療法などを用いた治療プログラムが中心となる.今後は高齢のアルコール依存症者に対する治療プログラムについての研究が進むことが望まれる.
キーワード 高齢者におけるアルコール依存症,身体的・心理的特徴,合併症,類型別特徴,治療プログラム
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論文名 高齢者にみる自殺の特徴と問題点
著者名 高橋祥友
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,14(4):430-435,2003
抄録 最近の長期にわたる不況下にあって,中年層の自殺の増加に社会の関心は向いている.しかし,人口構成を考えると最も深刻であるのは,高齢者の自殺である.老年期の自殺にはうつ病が密接に関連しているが,高齢のうつ病患者は若年者に比べて非定型な症状を呈することも多く,診断が困難な場合も少なくない.自殺を予防するには,老年期の精神障害の特徴を理解し,自殺の危険を早期に診断し適切な治療に導入する必要がある.
キーワード 老年期,うつ病,身体化,自殺,危険因子
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論文名 老年期の離婚;家裁医務室での経験から
著者名 山崎信之
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,14(4):436-442,2003
抄録 離婚を年齢別にみた場合,老年期の離婚はきわめて少ない.離婚問題が生じたとしても,老後の生活保障と絡んで解決が困難となる.離婚増加の趨勢のなかで,最近10年間に老年期の離婚もわずかながら増加傾向を示している.家裁に申し立てられる段階でも,老年期の「夫婦関係調整」事件は解決困難な事例が多いことが特徴となる.医務室で関与した27例について報告したが,非統合失調症性の妄想状態の事例が圧倒的に多い.
キーワード 離婚,高齢者,病的嫉妬,アルツハイマー病,「夫婦関係調整」事件
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論文名 高齢期妄想性障害と社会病理
著者名 小澤 勲
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,14(4):443-448,2003
抄録 高齢期にみられる妄想状態の原因疾患は多様であり,病態も異なる.そこで,痴呆性疾患,統合失調症,感情障害,非統合失調症性妄想状態をとりあげ,状況が精神症状に与える影響,妄想状態によって引き起こされる社会病理という双方向から論じた.そのうえで,高齢期は心・身体・生活世界の壁が低いことを論証し,治療・ケアに当たる者は,彼らの生活を知るべきことを述べた.
キーワード 痴呆随伴症状,晩期寛解,物盗られ妄想,非統合失調症性妄想状態,共同体被害妄想
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