論文名 | 非アルツハイマー型変性痴呆の最近の分類と知見 |
著者名 | 池田研二 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,14(3):279-286,2003 |
抄録 | 非アルツハイマー型変性痴呆には多くの変性疾患が属し,いくつかの分類が可能であるが,ここでは分子病理の成果に基づいて,細胞内に凝集する異常蓄積タンパクを軸にした分類を紹介した.一部,解明されていない疾患については従来の病理形態学に基づく分類を併用した.したがって,今後の研究の発展により完成されるべき未完成な分類であるが,より病因に近い視点に立った分類を家族性疾患と孤発性疾患に分けて示した. |
キーワード | 非アルツハイマー型変性痴呆,異常蓄積タンパク,家族性疾患,孤発性疾患,分類 |
論文名 | レビー小体型痴呆の最近の知見 |
著者名 | 勝瀬大海,井関栄三 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,14(3):287-293,2003 |
抄録 | レビー小体型痴呆の最近の臨床研究は,画像研究を含めてアルツハイマー型痴呆との鑑別が焦点となっている.基礎研究では,臨床症状と対応する複数の病理学的亜型があることが示され,病態の解明につながるレビー小体の形成機序が,主構成成分であるα-シヌクレインと関連した病理学的・分子遺伝学的研究により解析されている.治療に関しては,生化学的知見に基づきコリンエステラーゼ阻害薬などの効果が検討されている. |
キーワード | レビー小体型痴呆,レビー小体,α-シヌクレイン,臨床診断基準,病理学的亜型 |
論文名 | 前頭側頭型痴呆の最近の知見 |
著者名 | 寺田整司,石津秀樹,黒田重利 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,14(3):294-303,2003 |
抄録 | 前頭側頭型痴呆(FTD)に関しては,用語の使用を含めていまなお混乱した状況が続いている.今回のレビューではまず,FTDの提唱以降現在までを簡単に振り返り,現況の理解を目指す.次いで,一昨年提唱された診断基準を紹介し,そうした試みにもかかわらず,なお多くの問題点が残されていることを指摘する.最後に,最近の研究成果についていくつか簡単にふれる. |
キーワード | 前頭側頭型痴呆,ピック病,前頭側頭葉変性症,タウ,ユビキチン |
論文名 | パーキンソン病と痴呆の最近の知見 |
著者名 | 葛原茂樹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,14(3):304-312,2003 |
抄録 | パーキンソン病に出現する痴呆症状を脳の病理学的変化と対応した場合に,本来のパーキンソン病病変に由来する皮質下性痴呆(精神運動緩慢),アルツハイマー病病変の合併による痴呆と大脳皮質に出現するレビー小体が関与した痴呆(いずれも皮質性痴呆),血管性病変による痴呆の4型が区別される.抗パーキンソン病薬は痴呆のある患者ではレビー小体型痴呆に似た幻視やせん妄の副作用が出現しやすいので,L-ド−パを基本薬とし,抗コリン薬とアマンタジンは除く.それでも問題行動が消えない場合には,少量の非定型抗精神病薬(クエチアピンなど)を併用する. |
キーワード | パーキンソン病,痴呆,精神症状,レビー小体型痴呆,非定型抗精神病薬 |
論文名 | 進行性核上性麻痺(PSP)および皮質基底核変性症(CBD);タウオパチーとFTDP-17を含めて |
著者名 | 宮崎美雪,埴原秋児,天野直二 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,14(3):313-321,2003 |
抄録 | 進行性核上性麻痺(PSP)と皮質基底核変性症(CBD)は孤発性のタウオパチーに分類される疾患であり,近年急速に進歩を遂げてきたタウタンパクとタウ遺伝子の研究により,frontotemporal dementia and parkinsonism linked to chromosome 17(FTDP-17)とともにそれぞれの疾患のメカニズムが徐々に明らかとなりつつある.PSPとCBDはともにグリアタングル型痴呆として類縁疾患でありながらさまざまな異同が指摘されてきた.本稿ではその2つの疾患の疫学,臨床症状,検査所見,神経病理所見について解説し,FTDに関する変異型とその表現型に言及した. |
キーワード | 進行性核上性麻痺(PSP),皮質基底核変性症(CBD),frontotemporal dementia and parkinsonism linked to chromosome 17(FTDP-17),タウタンパク,タウ遺伝子 |
論文名 | ハンチントン病の最近の知見 |
著者名 | 村松太郎,鹿島晴雄 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,14(3):322-329,2003 |
抄録 | 1993年に関連遺伝子がクローニングされて以来,ハンチントン病についてはこの遺伝子産物であるHuntingtinをめぐる分子遺伝学的研究が主流になった.トランスジェニックマウスなどのテクニックが駆使された結果,Huntingtinの機能や相互作用するタンパクが明らかにされ,アポトーシスと神経変性の関係など従来の知見がひとつにまとまりつつあり,病態メカニズムの解明,さらには治療薬の開発までが視野にはいっている.ハンチントン病は,遺伝子と臨床の連結が最も進んでいる疾患のひとつとなっている. |
キーワード | Huntingtin,分子遺伝学,トランスジェニックマウス,治療薬 |
論文名 | 歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA) |
著者名 | 深津 亮 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,14(3):330-336,2003 |
抄録 | わが国で疾患単位として確立された歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)は,ポリグルタミン病であることが明らかにされた.神経変性や病態機構として,ポリグルタミン鎖を含む変異タンパクの発現→核内凝集体の形成→アポトーシスという過程のほかに,変異タンパクの発現→変異タンパクの核内移行・集積→特定の転写障害→神経の機能障害という過程が重要視されている.病因・病態解明から治療法の開発という最終目標への道程を歩み始めたと考えられる. |
キーワード | 歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症,ポリグルタミン病,核内集積,アポトーシス,転写障害 |