論文名 | プリオン病;最近の進歩 |
著者名 | 八谷如美,金子清俊 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,14(12):1465-1468,2003 |
抄録 | クロイツフェルト-ヤコブ病に代表される神経疾患の原因分子として,1982年にカリフォルニア大学のプルシナー博士らにより,「プリオン」が同定された.そもそも「プリオン」とは,感染性を有するagentという定義であったが,その後まったく同じアミノ酸配列が正常の個体にもコードされていることが判明し,正常細胞型プリオンタンパク質(PrPC)と命名された.これに対し,さきのプリオンはスクレイピー型プリオンタンパク質(PrPSc)として区別され,PrPScの生成機構としては,PrPScを鋳型としてPrPcの立体構造がPrPScと同様の構造に変換することと考えられている.PrPcとPrPScの立体構造の違いに関する熱力学的な予測から,PrPScへの変換に際しては,いまだ未同定の因子(factor X)の関与によりPrPcがいったんunfoldされる状態を経ると考えている.このことは,正常にfoldingされた分子(PrPC)を標的とするunfolding factorの存在を暗示する.既知の一般的な分子シャペロンはmisfoldされた分子を標的とするのに対し,この分子は正常にfoldingを受けた分子を標的とする,いわば新しいクラスの分子シャペロン(unfolding chaperone)といえる.筆者らは,酵母においてこのようなunfolding chaperoneを同定しUnfoldinと命名した. |
キーワード | プリオン病,プリオンタンパク質,Unfoldin,factor X,分子シャペロン |
論文名 | プリオン病の臨床診断;脳波と画像 |
著者名 | 西川 隆,池尻義隆,数井裕光,臼井桂子,谷口典男,武田雅俊 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,14(12):1469-1476,2003 |
抄録 | プリオン病の大多数を占める孤発性CJDと,わが国でも牛海綿状脳症が発生してヒトへの感染が懸念されている変異型CJDを中心に,脳波とMRIの所見をまとめた.孤発性CJDでは脳波のPSDとMRIでの基底核・皮質の高信号が特徴であり,初期診断にはことにMRI拡散強調画像が有用である.変異型CJDでは脳波の所見に乏しくMRIでは視床枕の高信号が特異的である. |
キーワード | プリオン病,クロイツフェルト―ヤコブ病,変異型CJD,MRI,脳波 |
論文名 | プリオン病の生物学的診断 |
著者名 | 山田正仁 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,14(12):1477-1482,2003 |
抄録 | プリオン病の生物学的診断として,髄液検査など現在用いられている診断法と新規に研究開発中の診断法について概説した.現在用いられている14-3-3タンパクなどの髄液診断マーカーは有用ではあるが,いずれも特異性等に問題があり,臨床的特徴や他の検査所見をあわせて鑑別診断を十分行う必要がある.さらに,血液・体液・採取容易な末梢組織を用いて,プリオン病に特異的な診断マーカーであるプロテアーゼ抵抗性異常プリオンタンパク(PrPSc)を,病早期から高感度に検出しうるような新規診断法の研究開発が行われている. |
キーワード | プリオン病,プリオンタンパク,診断マーカー,脳脊髄液,14-3-3タンパク |
論文名 | プリオン病の遺伝学的診断 |
著者名 | 袖山信幸,水澤英洋 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,14(12):1483-1487,2003 |
抄録 | プリオン病を遺伝子の側面からみた場合,(1)プリオンタンパク遺伝子上に遺伝性プリオン病を生じる変異が多数発見されており,それぞれが特徴的な臨床症状を呈すること,(2)孤発性プリオン病はプリオンタンパク遺伝子コドン129番の多型とプリオンタンパクのプロテアーゼ処理後のウェスタンブロットによる泳動パターンの組合せから6つのサブグループに分類されること,(3)上記以外にもコドン129番と219番の多型がプリオン病の発症と病像に関連していること,等が明らかになってきている. |
キーワード | プリオンタンパク遺伝子,遺伝子多型,ゲルストマン-ストロイスラー-シェインカー病,家族性致死性不眠症,クロイツフェルト-ヤコブ病 |
論文名 | 牛海綿状脳症問題に関する最近の動向 |
著者名 | 堀内基広 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,14(12):1488-1494,2003 |
抄録 | 2001年9月10月から開始された食用となる牛の牛海綿状脳症(BSE)全頭検査では,258万頭以上が検査され8例のBSE感染牛が摘発された.その検査のなかで24か月齢以下の若齢牛でのBSE感染が相次いで摘発され注目を集めている.欧州諸国におけるBSEの発生は減少する兆しがみえているが,2003年5月に発生の可能性が低いと考えられていたカナダでBSE感染牛が発見された.新型クロイツフェルト―ヤコブ病(vCJD)の患者数は,この2,3年増加する傾向がなく,vCJDの激増という最悪のシナリオは避けられそうな状況にある. |
キーワード | BSE,プリオン,牛海綿状脳症,クロイツフェルト-ヤコブ病 |
論文名 | 医原性クロイツフェルト―ヤコブ病 |
著者名 | 浜口 毅,山田正仁 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,14(12):1495-1501,2003 |
抄録 | 現在までに医原性クロイツフェルト―ヤコブ病(CJD)として,成長ホルモンまたはゴナドトロピン製剤投与後,硬膜移植後,角膜移植後,深部脳波電極などの脳外科器具によるものの報告がある.わが国では,硬膜移植後のCJDが多発しており,世界の2/3の症例に当たる97例の報告があり,大きな社会問題になっている.医原性プリオン病の発生を予防するために,プリオン病のサーベイランスによる感染ルートの監視,感染予防体制の充実,ドナーに潜在するプリオン病の簡便かつ高感度な検出法の確立が必要である. |
キーワード | クロイツフェルト-ヤコブ病,医原性,硬膜移植,角膜移植,成長ホルモン |
論文名 | 感染対策 |
著者名 | 江里口誠,黒原和博,黒田康夫 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,14(12):1502-1507,2003 |
抄録 | プリオン病の感染防止対策について概説した.感染防止には,プリオン病の発生状況の全国的規模でのサーベイランスと報告を受けたあとの行政府のすみやかな判断と決定が最も重要である.プリオン病患者との接触によって感染することはなく,入院拒否はあってはならない.患者の看護および手術,剖検時の感染防止対策はすでにマニュアル化されているので,それに沿って対応すれば安全である. |
キーワード | プリオン病,看護,消毒,手術,剖検 |