第18回日本老年精神医学会 演題抄録

 

U 1−58

アルツハイマー病とネプリライシン遺伝子の関連研究

笠岡病院・岡山大学大学院医歯学総合研究科精神神経病態学教室  坂井 歩
岡山大学大学院医歯学総合研究科精神神経病態学教室
        氏家 寛 中田謙二 石原武士
          黒田重利
西川病院・岡山大学大学院医歯学総合研究科精神神経病態学教室
   内田有彦
   鳥取市立病院  武久 康
   広島市民病院 神崎昭浩
 香川県立中央病院 山本光利
 きのこエスポワール病院 藤沢嘉勝
     白井病院 奥村一哉
【背景】アルツハイマー病(AD)の組織学的特徴は,老人斑とそれに伴う神経の変性である.この老人斑の主成分であるアミロイドbペプチド(Ab)の脳内での蓄積が,ADに至る病理学的カスケードの引き金であると知られている.したがって,この蓄積を抑制することが,ADの治療的アプローチのひとつであると考えられてきた.中性エンドペプチターゼとして知られているネプリライシンは,効率よくAbを分解すること,さらにAD患者の脳において,mRNAおよび蛋白質レベルで発現の低下を認めることから,ADの病因のひとつとしてネプリライシンの低下によるAbの異常蓄積の可能性が示唆されている.


【目的】ADの発症におけるネプリライシン遺伝子の役割の可能性を解明する.

【方法】対象は,孤発性AD患者240症例(早期発症84症例,晩期発症156症例)と年齢性別をマッチさせた健常対照者163例である.これらの対象について,ネプリライシン遺伝子のプロモーター領域に位置するSNP(−1075A>G,−1284G>C)およびGT繰り返し多型の疾患対照関連解析を行った.

【結果】SNP(−1075A>G,−1284G>C)において関連を検討したが,患者群と正常対照群との間で有意な差を認めなかった.一方,GT繰り返し多型においては,晩発性AD群と正常群の間でアレル頻度の有意差(P=0.0007)を認めた.とくに22繰り返しアレルを,晩発性AD群は有意(P=0.0028)に多く保有していた.

【結論】今回の結果から,ネプリライシン遺伝子プロモーター領域のGT繰り返し多型,あるいはそれと連鎖不平衡にあるあらたな多型と晩発性AD発症との関連性が示唆された.

2003/06/18


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