第18回日本老年精神医学会 演題抄録

 

U 1−45

痴呆性高齢者のしめす行動異常−とくに弄便と徘徊について
  

 岡山大学大学院医歯学総合研究科精神神経病態学
寺田整司 横田 修 中島華枝
石原武士 黒田重利
     慈圭病院 石津秀樹
 きのこエスポアール病院
藤沢嘉勝 久郷亜希 佐々木健
     山陽病院 中島唯夫 山本 真 中島良彦
【目的】弄便や徘徊を有する痴呆性高齢者が,どのような特徴を有するのかを明らかにする.


【対象と方法】入院中あるいは入所中の痴呆性高齢者を対象として,アンケート調査を行った.対象となった痴呆性高齢者に関して,そのプロフィール,西村式精神症状評価尺度,西村式日常生活活動能力評価尺度,さらには一昨年度の本学会にて報告した「痴呆性高齢者のQOL評価尺度」により評価を行った.また,弄便・徘徊や他の精神症状についても,全く見られない-まれに見られる-ときどき見られる-よく見られる,という4段階評価を行い,「ときどき見られる」あるいは「よく見られる」とされた群を陽性群とし,「全く見られない」とされた群を陰性群として,比較検討した.


【結果】217名の痴呆性高齢者に関するデータが回収された.弄便および徘徊を有する痴呆性高齢者は,20名と74名であった.弄便は認知障害やADL障害がより高度の痴呆性高齢者に多く認められ,徘徊はADLが比較的保たれている痴呆性高齢者に多く認められた.弄便陽性群では陰性感情・陰性行動が目立ち,幻視・幻聴・被害妄想・不眠がより多く認められたが,徘徊陽性群では落ち着きのなさが目立ち,不眠がより多く認められた.


【考察】弄便はより重度の痴呆性高齢者に多く,徘徊はADLが保たれている群に多かったという結果はいままでの報告とほぼ一致していた.弄便を呈する群はさまざまな精神症状を合併しやすいことが明らかとなった.一方,徘徊を呈する群は落ち着きのなさは目立つものの,不眠以外の精神症状は目立たなかった.

2003/06/18


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