【はじめに】重度痴呆患者デイ・ケアは,精神症状および行動異常が著しい痴呆患者の精神症状等の軽快および生活機能の回復を目的とした精神科専門療法である.しかしながらその実施方法,効果判定に関しては確立しているとはいいがたい.われわれは作業療法(以下OTとする)を主軸にしたチームアプローチであるという認識のもと平成13年7月に開設以来,日本作業療法士協会版の痴呆アセスメント(第1版)を使用しケアプランやOT計画を実施してきた.その結果痴呆の類型とケアプラン,OT計画の方向性に若干の知見を得たので考察を加え報告する.
【対象と方法】平成13年7月から平成14年10月まで当デイ・ケアに1週間以上通所しデイケアプラン,OT計画を立案した51名を対象とした.対象者の平均年齢79.1歳,男性8名,女性43名である.診断別ではアルツハイマー型痴呆22名,脳血管性痴呆17名,混合型痴呆6名,ピック病3名,レビー小体型痴呆1名である.方法としてはデイ・ケア開始後担当スタッフが家族からの情報を加えアセスメントを行いケアプランを作成,担当OTがOT計画を立案しカンファレンスで決定する.このアセスメントは在宅での痴呆患者または家族にとって生活上の問題をとらえよりよい生活を送るためのケアプランにつなげるツールとして考えられた評価である.痴呆の状態像で類型化し共通のイメージでプランを立てていくというもので,当クリニックでは多職種の共通言語のツールとして使用した.
【痴呆の類型と特徴】以下の5タイプに分かれる.
1 ふりだしタイプ−短期記憶障害や時に失禁がみられる.IADLも比較的保たれている.
2 とりつくろいタイプ−IADLの低下が著明.睡眠障害が多くみられる.対人能力の低下によりトラブルにつながりやすい.
3 不安・多動タイプ−ADLは中等度に低下,IADLの低下が著明.記憶障害による問題行動や不安が強くなる.徘徊が多くみられる.
4 介護ヘトヘトタイプ−ADL,IADLの低下が著明.他者に対する迷惑行為や徘徊が頻回に出現,不安定な歩行により転倒も多くなる.コミュニケーションも困難となり介護者にとって心身共に負担が大きい.
5 ひっそり・ゴソゴソタイプ−ADL,IADLの低下.全般的に問題行動や精神症状は少ないが時折車椅子から滑り落ちたり床に坐ってごそごそしていることがある.
【結果】デイ・ケア開始時のタイプとしてはふりだしタイプ9名,とりつくろいタイプ23名,不安・多動タイプ9名,介護ヘトヘトタイプ7名,ひつそりゴソゴソタイプ3名であった.ふりだしタイプでは,対人関係に対するケアプランが多く,残存能力の活用や役割遂行のOT計画が立てられていた.効果判定を3か月後にプランを再検討した.痴呆患者の治療,生活適応には人的物的環境設定が細かく必要であることがわかった.
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