【はじめに】群馬県では平成14年12月に,県内のリハビリ資源の実態を把握して地域リハビリを推進するため,全リハ実施機関を対象に,リハ資源のアンケート調査を行った.群馬リハビリテーションネットワーク(理事長 矢野亨)が委託を受け,演者らもその調査委員として加わり,さらに痴呆対応型共同生活介護(=痴呆性老人グループホーム,以下Gホーム)分野の調査結果の分析にかかわった.群馬県には,平成15年2月1日現在,Gホームの事業者数は108あり,対65歳以上人口に占める整備率は全国一である.しかしケアの質を問われる事業所もあり,その向上が求められている.
【調査方法と回収率】全リハ実施機関1,605か所を対象としたアンケート調査の一環として,平成14年10月1日現在事業を行っている,Gホーム95か所に調査票を送り,それを回収した.45件の回答があり,回収率は47%であった.
【調査内容】事業種ごとに異なるが,Gホームの調査内容は,設立母体・利用人数・65歳未満の入居者数・入退居の条件・リハビリ内容・職員数・採用希望リハ職・リハビリに関する自由意見等であった.
【結果】・設立母体および利用人数:県の資料で,事業主体は平成15年2月1日現在,営利法人,医療法人,NPO,社会福祉法人の順となっているが,回答でもほぼ等しい.また利用人数においても,1ユニットの小規模事業所が多く,回答の得られた事業所の実態と一致する.
・65歳未満の入居者数:ほぼすべての事業所で65歳以上の入居者が主体であった.
・入退居の条件:精神症状・問題行動の少ない,共同生活・歩行可能な利用者像が浮び上がる.
・リハビリ内容:理学療法・作業療法・言語聴覚療法は,それぞれの職種が勤務していないため,行われていない.家族等への相談・指導行為を除けば,QOL向上のための活動がおもなものである.
・職種別職員数:ホームヘルパー,介護福祉士がGホームのおもな担い手である.
・採用希望リハ職等:現在PT・OT・STなどリハビリ専門職の配置はゼロだが,22事業所でリハビリ専門職の採用希望がある.
【考察】Gホームは,家庭的な環境でのケアを目的とした小規模な施設的サービスといえる.そしてわが国では,日本的「宅老所」的なものと,北欧の「小規模痴呆ケア施設」の2つの潮流を,そのなかに見ることができる.しかし現状はどっちつかずの,ただ規模が小さいだけの集団処遇に,堕しかねない危険性をもっている.またGホーム入居者の多くは特養入所待機者で,ADLの低下が著しいケースが多い.こうした状況で,リハビリ職の役割,リハビリ的視点は大きな意味をもつ.家庭的な生活のなかで,個別の評価とプログラムに従って,利用者の機能・能力を高めようとするあり方が求められて,予想外にリハ専門職の採用希望の施設が多くなっているのものと思われる.また,65歳未満の入居者に特化されたGホームは皆無であったが,初老期痴呆のケアの困難性を考えたとき,その存在が渇望される.
【まとめ】今回のリハ資源調査は,95送付中45回答と回収率は低かったものの,Gホームにおけるリハビリ担当職の数,実施しているリハビリの内容およびリハビリに対する考え方が明らかにされる等,興味あるものとなった.
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