第18回日本老年精神医学会 演題抄録

 

U1−29

地域高齢者におけるうつの有病率
  

国立霞ヶ浦病院 日高 真
 筑波大学臨床医学系精神医学
佐々木恵 宮本美佐 朝田 隆
 国立精神・神経センター武蔵病院
木之下徹 山下典生
 茨城県立医療大学 中島真理子
【背景】わが国における高齢者のうつの有病率についてのデータは乏しい.またうつと認知機能の関係についての疫学的な所見も少ない.


【目的】茨城県利根町においてうつの有病率を住民の認知機能測定にあわせて推定する.


【方法】茨城県利根町に居住する65歳以上のすべての住民約2,800名を対象に気分状態と認知機能の5領域(記憶,言語,視空間機能,推論,注意)を測定した.気分状態についてはまずスクリーニングとしてGeriatric Depression Scale(GDS)を行った.カットオフ値6点としてうつの疑われる者はすべて系統的な面接の対象とした.これは精神科医がPASを用いて行った.またカットオフ値以下である人から無作為に選んで同様の面接を行った.


【結果】70%の町民が1次スクリーニングに参加した.このうちスクリーニングでうつが疑われた220名と,580名のカットオフ値以下の個人が系統的な面接の対象になった.その結果220名のうち56名が,後者では13名がうつ状態にあると判断された.この結果から65歳以上町民におけるうつの有病率は4%と推定された.さらにうつをDSMWの診断基準により下位分類した.その結果大うつ病性障害1%,気分変調性障害2%,抑うつ気分を伴う適応障害0.5%,脳血管性障害によるうつが0.5%であった.
 なおスクーリングにおいてカットオフ値を上回った個人の70%が認知機能の5つの領域のいずれか1つ以上において同年代の平均値より1SD以下の得点を示した.


【まとめ】うつの有病率は約4%と推定された.こうした人たちの多くで何らかの認知機能障害が疑われた.MCIなど痴呆前駆状態が注目されつつあるが,こうした観点からもうつは重要である.

2003/06/18


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