第18回日本老年精神医学会 演題抄録

 

I 2−23

地域在住痴呆疑い高齢者(CDR 0.5)の認知機能検査(CASI)と大脳糖代謝;田尻プロジェクト報告(3)
  

東北大学大学院医学系研究科高次機能障害学
山口 智 目黒謙一 田中康裕
石井 洋 石崎淳一 佐藤真理
橋本竜作 目黒光恵
 東北大学大学院経済学研究科福祉経済設計学
          関田康慶
【背景・目的】われわれは一昨年より報告している田尻町有病率調査において,簡易認知機能検査法としてCASI(Cognitive Abilities Screening Instrument)を用いてきた.CASIは9項目の認知ドメインを評価可能で,軽度障害では対応困難なMMS,重度では評価困難なWMS-Rと違い,どの障害程度にも対応できることより有用性が高い.しかし,この検査成績が示す神経基盤についてはいままで検討されていなかった.今回われわれはCDR 0.5のvery mild AD,ならびにCDR 1のprobable ADを対象とし,CASIの下位項目のスコアとFDG-PETにおける脳局所糖代謝量との関係を分析し,CASIの神経基盤を想定し,その有効性を検討したので報告する.


【対象と方法】対象は宮城県田尻町の有病率調査対象者,検査に文書で同意の得られた19名で,CDR 0.5(very mild AD)12名,CDR 1(NINCDS-ADRDAによるprobable AD)7名で,男5名,女14名,平均年齢75歳である.分析1はCDR 0.5(very mild AD),分析2はCDR 1のAD 7名を加えた19名の分析を行った.脳機能画像検査としてFDG-PETを施行した.CASIの9つの下位項目の各スコアと,FDG-PETによる安静時局所脳糖代謝量(Phelpsの方法)との関係をスペアマンの順位相関を用いて分析した.


【結果・考察】分析1では,CASI下位項目の長期記憶と角回および視床,注意力と前頭葉外側および前頭葉底部,言語機能と視床においておのおの有意な相関を認め,分析2では,長期記憶と側頭頭頂移行部,短期記憶と海馬および前頭前野で有意な相関を認めた.このことは,CASI下位項目は,神経ネットワークの障害も含めたADの神経基盤をある程度反映していると考えられ,認知機能検査として有効であることを裏づけている.

2003/06/18


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