第18回日本老年精神医学会 演題抄録

 

I 2−20

アルツハイマー型痴呆における抑うつ症状の前頭葉機能検査に及ぼす影響
  

名古屋市立大学医学部精神科
仲秋秀太郎 村田佳江 松井輝夫
         古川壽亮
 名古屋大学環境学研究科    渡辺はま
    八事病院 佐藤順子
 名古屋第二赤十字病院     辰巳 寛
【目的】近年の画像研究は,アルツハイマー型痴呆における抑うつ症状と前頭葉の機能低下との関連を指摘している.しかしながら,アルツハイマー型痴呆の抑うつ症状が神経心理検査における前頭葉機能に与える影響に関しての詳細な検討はまだ明らかにされていない.この研究では,抑うつ症状を伴うアルツハイマー型痴呆と伴わないアルツハイマー型痴呆との前頭葉機能を比較した.


【対象と方法】中等度(CDR 1-2)のアルツハイマー型痴呆(抑うつ症状を伴う痴呆18名と伴わない痴呆18名)に,知能(WAIS-R),言語性記憶検査(RAVLTなど),非言語性記憶検査(Reyの複雑図形など),意味記憶(WF),前頭葉機能検査(Stroop Test,Trail Making Test,Digit Symbol,LF,Pencil and Paper Testなど)を含む包括的な神経心理検査を施行した.この2群は,性別,教育歴,年齢,MMSEの得点では有意差がなかった.


【結果】前頭葉機能検査に関するPencil and Paper Testの2重課題やStroop Test,Trail Making Test(B),LFに関してのみ有意差を認めた.知能,言語性,非言語性,意味記憶,その他の前頭葉機能検査には有意差を認めなかった.


【考察と結論】アルツハイマー型痴呆における抑うつ症状は,前頭葉の機能,とくに実行機能や注意の抑制や変換に関する機能に影響を及ぼすことが明らかにされた.エピソード記憶や意味記憶,知能には影響を与えなかった.

2003/06/18


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