第18回日本老年精神医学会 演題抄録

 

I 2−19

痴呆性疾患における構成障害の検討;2次元課題と3次元課題による比較
  

 医療法人社団俊仁会大植病院
中山隆人 柿木達也 松田年司
大植正俊
神戸大学大学院医学系研究科環境応答医学講座精神神経科学分野   前田 潔
【はじめに】構成障害は,痴呆症の脳機能障害のひとつとして認められている.MMSE 等痴呆評価尺度でも,構成課題が指標のひとつとして用いられている.
 脳機能障害患者における,2次元課題と3次元課題の成績の相関に関しては,報告は少ないながら,構成障害の判定を行う場合には,どちらの課題も行うことが望ましいとの報告もある.
 今回,われわれは,痴呆性高齢者に,立方体図形の図形模写と,同立方体図形の粘土による造形の課題を行った.興味深い結果が得られたので報告する.


【方法と対象】対象者は,当院に入院もしくは併設老健施設に入所する痴呆性高齢者28名で,アルツハイマー型痴呆10名,血管性痴呆14名,その他痴呆4名で,平均年齢82.6±10.3,MMSE平均値14.9±5.4である.
 構成課題は,2次元課題として立方体の図形模写,3次元課題として同立方体図形の粘土による造形の2つの課題を行い,それぞれの結果を比較検討した.


【結果】課題の結果を対象者を以下の4通りの群に分類することができた.
 T群 図形模写(可)  粘土(可)
 U群 図形模写(可)  粘土(不可)
 V群 図形模写(不可) 粘土(可)
 W群 図形模写(不可) 粘土(不可)


【考察】アルツハイマー型痴呆患者は,T,U群にはまったくなく,V,W群に多く認めた.また,V群においては,アルツハイマー型痴呆の患者が多い傾向を認めた.このことより,立方体の図形模写と,粘土による造形における障害は,疾患により,異なった機序によるものと考えられた.
 当日は,データを追加し,より詳細な発表を行う予定である.

2003/06/18


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