第18回日本老年精神医学会 演題抄録

 

I 1−13

身体合併症を有する老人性痴呆患者アセスメント病棟の実態調査
  

秋津鴻池病院 松本寛史 杉山弘朗 蔭山 登
田原宏一 松村一矢 市川公子
弓崎恭俊 高橋弘幸 中谷紀子
吉村知恵 平井基陽
 秋津鴻池病院は,奈良県東西部の御所市に位置する精神科423床内科121床の病院である.秋津鴻池病院では,平成9年3月より老人性痴呆疾患治療病棟を開設している.われわれは,その入退院患者の動向調査から,身体合併症をもつ痴呆性老人の治療の場として痴呆疾患治療病棟が本来の目的から少しはずれて使用されており,身体的に治療の必要がありかつ問題行動を伴う痴呆性老人の治療の場についての方向性を決定する必要性について老年精神医学雑誌で報告した.そこで当院では,痴呆性老人を全人的に総合評価し,当該患者にとってよりよい生活の場がどこであるかの検討を試みた.さらに身体合併症を有している痴呆性老人に対して,身体合併症の治療を行うメディカル精神医学ユニットとしての機能をもつ病棟(当院では,アセスメント病棟と呼称)を平成12年8月より開設した.今回,当該病棟の退棟患者について調査したので報告する.


【目的】身体合併症を有する痴呆性老人の治療の場としてアセスメント病棟の意義を考察すること.


【結果】平成12年8月から平成14年末日までに当該病棟を退棟した患者は,300名(男152名女148名・平均年齢78.3歳)で,平均在棟日数は67.3日であった.入棟経路は,自宅79名(27%)・特養31名(10%)・老健49名(16%)・他院58名(19%)・当院内科病棟39名(13%)・当院の他精神科病棟44名(15%)であった.退棟先は,自宅33名(11%)・特養29名(10%)・老健54名(18%)・他院23名(8%)・当院内科病棟17名(6%)・当院の他精神科病棟76名(24%)・死亡68名(23%)であった.疾患別では,アルツハイマー病133名(45%)・脳血管性痴呆114名(38%)・他の変性性痴呆疾患22名(7%)・機能性精神疾患31名(10%)であった.身体合併症は,KatholのMPUの4つの分類のうちタイプ1レベルの身体合併症を入棟時に有する者は52名(17%)・タイプ3またはタイプ4の身体合併症を有する者は176名(59%)・身体合併症のない者72名(24%)であった.


【考察】入棟時に身体合併症を有する者が多く,退棟時に死亡例が24%を占めることより,アセスメント病棟は,痴呆性老人の機能の評価だけでなく,トータルケア病棟としての機能をもつことが示唆された.
 発表当日は,さらに対象者を増やし,BPSD(behavioral and psychological symptoms of dementia)の有無等を調査し報告する予定である.

2003/06/18


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