第18回日本老年精神医学会 演題抄録

 

I 1−12

当センターでのものわすれ外来(精神科)の経験
  

秋田県立リハビリテーション精神医療センター
佐藤隆郎 小畑信彦
 当センターは秋田市郊外にある300床の病院で,おもな診療科は,神経精神科とリハビリテーション科である.当センターでは以前は神経精神科外来の一部として痴呆患者の外来診療を行っていたが,平成13年4月から物忘れ外来を神経精神科外来と別の枠組みで開設し,神経精神科とリハビリテーション科とで分担して外来診療を行っている.平成13年4月1日からの最初の1年間の物忘れ外来(精神科分)の報告をしたい.1年間での初診者は73名(男性27名,女性46名)で,平均年齢は76.4歳(32-92歳)であった.ICD-10を用いた初診時診断は,アルツハイマー病の痴呆41人,血管性痴呆16人,その他の痴呆3人,正常(健忘のある症例を含む)4人,せん妄4人,脳器質性精神障害1人,妄想性障害1人,うつ病2人,てんかん1人であった.初診時の患者状況は,在宅が48人,施設入所中が14人,病院入院中が11人であった.48人(66%)が紹介状を持参した.53人にHDS-Rを施行して,平均点は9.6±8.2点(0-28点)だった.36人にClinical Dementia Ratingを施行して,CDR 0が1人,CDR 0.5が2人,CDR 1が7人,CDR 2が7人,CDR 3が19人であった.初診時の方針は,入院予約34人,即日入院1人,当センター通院16人,初診のみ22人であった.その後の経過で34人が当センターに入院した(痴呆病棟31人,精神科病棟2人,リハビリテーション科病棟1人).当センター物忘れ外来では重度痴呆が多く,入院希望の受診が多かった.いわゆる記憶障害だけを主訴として受診したのはわずか4人であり,記憶障害への指導,検査へのニーズは少ないと思われる.緊急入院の希望受診が相当数あったが,当センターに1人,他院に1人の計2人のみが入院した.問題行動が著明でも入院させられなかった場合があり,痴呆患者の入院システムの整備が必要と思われた.また,重篤な身体合併症と問題行動の両方を有する患者の処遇も大きな問題である.

2003/06/18


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