第18回日本老年精神医学会 演題抄録

 

I 1−10

当センタ−における高齢者結核患者の現状
  

福岡県立精神医療センター大宰府病院
矢野 淳 松元友和 渡辺千洋
藤川尚宏 二宮英彰 小原喜美夫
 最近高齢者肺結核患者が増えている.そのなかにおいて痴呆を含む精神疾患に合併した活動性肺結核患者の問題は深刻である.そこで,今回われわれは当センターにおいて精神病床で結核患者を収容できる厚労省におけるモデル事業の制度化に伴い紹介入院となった患者の現状について診療録に基づき調査集計したのでその結果を報告する.対象は過去3年間に入院となった患者60名である.男女比は男性44名女性16名,平均年齢は72.3歳.紹介は精神科単科病院のほか,老健施設,結核療養所,一般(総合)病院,保健所,など多岐にわたっていた.入院形態別では任意入院30名,医療保護入院28名,措置入院2名であり,ICD-10分類による精神医学的診断分類ではF0 22名,F2 21名,F7 6名,F1 4名,その他7名であった.平均入院期間は7.8か月で,結核予防法における命令入所は実に68.4%にのぼっていた.このことは感染力のある活動性肺結核患者が多いことを示している.以上より高齢者の肺結核では痴呆患者が一位であり,次の慢性の統合失調症患者と合わせると全体の71.7%を占めていた.また措置入院と医療保護入院でほぼ半数を占めており,病気に対する認知および理解力の低下も紹介時に結核が重症化している一因と考えられた.

2003/06/18


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