第18回日本老年精神医学会 演題抄録

 

I 1−7

最初期アルツハイマー型痴呆(MCI)の部分容積効果補正後の年齢別にみたSPECT所見
  

国立精神・神経センター武蔵病院
山下典生 木之下徹 中野正剛
 筑波大学臨床医学系精神医学     朝田 隆
 国立精神・神経センター武蔵病院放射線科
松田博史 大西 隆 金高秀和
 吉岡リハビリテーションクリニック     宇野正威
【はじめに】われわれは最初期のアルツハイマー病(DAT)患者のSPECT画像を解析し,発症年齢によって脳血流低下パターンが異なることを第16回日本老年精神医学会において報告した.若年発症型では両側後部帯状回〜楔前部と両側上頭頂小葉,高齢発症型では左海馬傍回と両側後部帯状回での局所脳血流低下を認めた.しかしこれらの血流低下パターンに対する萎縮の影響を検討していなかった.今回,頭部MR画像を用いてSPECT画像の部分容積効果を補正し,萎縮による影響を考慮したうえで脳血流低下部位を明らかにしたので報告する.


【対象】対象者は記憶障害のみの認知機能障害で当院を受診し,その後2年の追跡期間内でprobable AD(NINCDS-ADRDA)と診断された59人(平均年齢±標準偏差70.2±8.55歳,男性/女性=30/29,MMSE=25.9±1.55)である.すべての検査は説明をしたうえで本人の同意を得て行った.解析には初診時のデータを用いた.なおこれらの対象は初診時PetersenらのいうMild Cognitive Impairmentを満たす.


【方法】99mTc-ECDをトレーサとしたSPECTを施行し脳血流量の測定を行った.また,頭部MRIを施行し脳実質画像を得た.SPECT画像とMRI画像の重ね合わせを行ったのち,両画像の灰白質を抽出し,SPECT灰白質画像をMRI灰白質画像で除することにより部分容積効果を補正し,萎縮の影響を除いた画像を得た.年齢に層別化したのち,SPMにより年齢と性をマッチさせた正常者と比較検討した.


【結果】70歳未満では両側後部帯状回,楔前部,上頭頂小葉,中〜下側頭回での血流低下が認められた.70歳以上では両側後部帯状回の血流低下のみ認められた.


【考察】70歳未満では部分容積効果を補正することによって中〜下側頭葉の血流低下をあらたに認めたがそのパターンは補正前とほぼかわらなかった.若年発症型の血流低下パターンは萎縮による影響をあまり受けないと考えられた.70歳以上では後部帯状回の血流低下がより明瞭になったが海馬傍回の血流低下は認められなかった.つまり海馬傍回での血流低下は萎縮による部分容積効果の現れと考えられる.SPECTによるDATの初期診断の精度を高めるには部分容積効果の補正をする必要がある.

2003/06/18


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