第18回日本老年精神医学会 演題抄録

 

I 1−6

easy Z-score Imaging System(eZIS)を用いた前頭側頭葉変性症のSPECT診断
  

山形大学医学部精神神経科
林 博史 川勝 忍 鈴木春芳
深澤 隆 小林良太 大谷浩一
 山形大学医学部放射線科  駒谷昭夫
【目的】ピック病はアルツハイマー型痴呆とならんで代表的な変性性痴呆であるがその診断は正確になされていないことが多い.近年,ピック病frontotemporal lobar degeneration(FTLD)の1型として分類と診断基準がつくられているが,機能画像についての検討は十分になされていない.今回,松田らが開発した新しいSPECT用画像統計解析ソフトウェアを用いて,FTLDの脳血流分布について検討したので報告する.


【対象】対象は,FTLD病10例で内訳は,Frontotemporal dementia(FTD)のピック型(従来診断の前頭側頭型ピック病)5例,Semantic Dementia(SD)(同,側頭型ピック病)5例である.平均年齢63.5歳,平均罹病期間4.2年,HDS-R平均14.8点,MMSE平均17.5点であった.


【方法】トレーサーとしてTc-99m-ECDを用い,CERASPECT3000にて脳血流SPECTを施行した.ファントム補正したうえで,正常データベースとの差をeasy Z-score Imaging System(eZIS)を用いて,Zスコア表示した軸位断,冠状断および脳表投影画像を作成した.MRIはSIGNA1.5Tにて撮影した.なお,検査にあたって,患者および家族に目的と方法を説明し,同意を得たうえで行った.


【結果】MRI上の萎縮部位は,FTDでは右優位3例,左優位2例,SDでは右優位1例,左優位4例であった.脳表投影画像において,FTDでは,前頭葉眼窩面,内側面を含めて前頭葉の血流低下範囲が明瞭に描出され,側頭葉での血流低下は早期例では軽度であった.SDでは,側頭葉前部,とくに側頭極の血流低下が明瞭に描出され,前頭葉内側部の血流低下も伴うことが多かった.また,FTDおよびSD両者で,萎縮が強い半球側では,全例で頭頂葉にも血流低下部位が及ぶことが示された.アルツハイマー型痴呆でのSPECT上の特徴とされる後部帯状回での血流低下は,1例のみでみられた.


【結論】eZISでは,FTLDの前頭,側頭葉病変の広がりの把握に有用であることが示された.また,主病変の前頭側頭葉だけでなく,頭頂葉にも血流低下部位が及ぶことも示された.

2003/06/18


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