第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【II B-20】

生化・神経病理・行動科学

痴呆の徘徊患者の歩行リズム
      
 

国立下総療養所・国立精神・神経センター精神保健研究所  堀宏治
国立精神・神経センター精神保健研究所  稲田俊也
国立下総療養所  冨永格 織田辰郎 寺元弘
慶應義塾大学医学部精神神経科  鹿島晴雄
  

 アルツハイマー病の痴呆(以下,AD)群ないし血管性痴呆(以下,VD)群の徘徊の歩行リズムを求める目的で,115例の痴呆患者の歩行数を午前(9:00〜13:00),午後(13:00〜17:00),夜間(17:00〜24:00),深夜(24:00〜9:00)の各パートごとに求めた(パート歩行数).非痴呆患者40例の1日総歩行数の平均値+2倍標準偏差が9,979歩となったため,痴呆患者のうち1日総歩行数が10,000歩以上の者を“痴呆徘徊群”とし,“痴呆非徘徊群”および“非痴呆群”との歩行リズムの比較を行った.比較は,“痴呆徘徊群”をAD群およびVD群の重症度ごとに最低歩行数を示すパート(nadir part)の分布および振幅(最小のパート歩行数に対する最大のパート歩行数の比率)で行った.結果はAD群では各重症度に徘徊群が分布しているのに対し,VD群では中等度の痴呆に多く徘徊群が分布していた.また,nadir partおよび振幅に統計的有意差はなく,徘徊群の歩行にはリズム障害は認められなかった.しかし,nadir partは非痴呆群では夜間帯に多く出現するのに対し,痴呆群では深夜帯に多く出現し,徘徊群では振幅の増加または低下が認められた.こうした結果を徘徊群とのかかわりで考慮すべきである.

2001/06/15


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