第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【II B-16】

遺伝

Interleukin-6遺伝子多型とアルツハイマー病発症との
関連
      
 

順天堂大学医学部精神医学教室
柴田展人 大沼徹 高橋正 馬場元 石塚卓也 新井平伊
自治医科大学付属大宮医療センター神経科
大塚恵美子 植木彰
長尾病院精神科
長尾正嗣
  

【はじめに】Interleukin-6(IL-6)は神経免疫反応を調節し,急性炎症反応において重要な役割をになっている.またAb蛋白の遊離,脳内における沈着に関与すると考えられており,アルツハイマー病(AD)発症との関連も示唆されている.一昨年Papassotiro-^npoulos AらによりIL-6vntr遺伝子多型がAD発症のリスクを低下させ,発症年齢を遅延させるデータが報告された.またIL-6prom遺伝子多型の血漿中IL-6活性に与える影響についても検討が行われている.今回われわれはこれらIL-6遺伝子多型とAD発症の関連を検討した.さらに,IL-6遺伝子多型が血漿中IL-6活性に与える影響についてELISA法を用いて検討を加えた.


【対象】
対象は,演者らの所属する医療機関の外来および入院患者で,NINCDS-ADRDAによって臨床的に診断されたAD128症例と,年齢をマッチさせた健常対照者83例である.対象者には本研究の主旨,目的について十分説明し,文章による同意を得た.またAD症例については本人および家族から同様にして同意を得た.


【方法】
対象者の末梢静脈血を採取し,標準的方法により白血球からgenomic DNA(gDNA)を抽出した.IL-6vntr遺伝子多型の決定についてはPapassotiro-^npoulos Aらの報告により,特異的プライマーを用いて行った.IL-6prom遺伝子多型についてはBagli Mらの報告によるPCR法を一部改変し,IL-6 promoter領域の増幅を行い,次いで特異的制限酵素Sfa NIによりPCR産物を切断し,決定した.また一部症例において血漿中IL-6活性の変化をELISA法(Quantikine kit, R&D SYSTEMS)を用いて計測した.そしてIL-6遺伝子多型と血漿中IL-6活性の比較を行った.


【結果】
IL-6vntr遺伝子多型頻度は欧米の従来の報告と異なり,人種差があることが推察された.一方,IL-6prom遺伝子多型頻度はおおむね欧米の報告と一致した結果となった.現在,AD症例群と正常対照群間におけるIL-6遺伝子多型頻度の比較を行い,さらに血漿中IL-6活性とIL-6遺伝子多型との相関を解析中であり,当日そのデータについても供覧する予定である.

2001/06/15


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