第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【II B-15】

遺伝

痴呆疾患におけるタウ遺伝子多型の頻度
      
 

兵庫県立高齢者脳機能研究センター
保田稔 橋本衛 数井裕光 中野葉子
博野信次 川又敏男 森悦朗 三好功峰
  

【目的】痴呆疾患とタウ遺伝子多型との関連の有無について検討する.


【背景】タウ蛋白が細胞内に異常蓄積する疾患はTauopathyとよばれ,そのなかにはAlzheimer病,Pick病,進行性核上性麻痺(PSP),皮質基底核変性症(CBD),染色体17番に連鎖したパーキンソン徴候を伴う家族性前頭側頭型痴呆(FTDP-7)が含まれる.タウ遺伝子coding region の missense, silent, deletion mutationやintronic mutationがFTDP-17を引き起こし,phenotypeとしてPick病,PSP,CBDを示す症例が報告されている.さらにPSPではtau exon 9のintronに存在するdinucleotide repeatとの連関が報告されている.またタウ遺伝子のexonにはいくつかの多型が報告されている.


【方法】痴呆患者のうち,遺伝子検査の同意が得られ,診断基準に基づいた疾患の診断が可能であった症例のタウ遺伝子をシークエンス解析し,遺伝子変異や多型と疾患との関連を検討する.


【結果】4家系においてタウの遺伝子変異がみつかった.また正常対照者(n=41)における多型の頻度はExon 1(AluI cutting),Exon 4A(MspI cutting),Exon 4A(BsrD1 cutting),およびExon 4A(MspA1I cutting)はすべてnormal allele, Exon 6(AflV cutting)normal allele 58%, polymorphic allele 42%,Exon 6(BslI cutting)normal allele 95%, polymorphic allele 5%,Exon 9(MspI cutting)normal allele 95%, polymorphic allele 5%であり,Alzheimer病,FTD,PSP,CBDにおける多型頻度と有意の差はなかった.


【結論】わが国にもタウ遺伝子変異をもつ家系が存在する.タウ遺伝子多型には特定の疾患と有意の連関を示すものはなかったが,欧米において報告されている頻度と大きな開きがあり,今後症例数を増やして検討する必要がある.

2001/06/15


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