第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【II B-8】

診断

脳波解析による初期ADの診断法“DIMEN-SION”
      
 

(株)脳機能研究所  武者利光 Utpal Kumar Saha
国立精神・神経センター武蔵病院
朝田隆 山下典生 木之下徹 松田博史 宇野正威
  

 武者らは大脳皮質内ニューロン活動の空間的不均一性と時間的不安定性を脳波解析で評価する新技術DIMENSIONを開発した.この技術がADの早期診断に適用できる確証を得た.21個の電極を国際10-20法に従って頭皮上に配置し,安静閉眼状態で右耳朶基準脳波を5分間記録し,a波(周波数幅3Hz)成分の頭皮上電位分布を計算する.その電位分布と最もよく近似する1個の等価電流源を脳内に求め,それが電極位置につくる電位と記録されたa波成分電位との差の平均二乗値を記録電位の平均二乗値で規格化した値をr2とする.d=(1−r2)1/2を双極子度とよぶが,この値はa波の脈動につれて変動するので,ピーク値の標準偏差をstd,ピーク値の平均を〈d〉とする.前者は皮質活動の空間的均一性を,後者は時間的不安定性を表している.〈d〉の減少とstdの増加はAD患者の側頭葉および頭頂側頭葉の血流低下と正の相関をもつことがSPECTによって確認された.
 MMSEが24以上の被験者36名を選び確定診断と脳波記録を行った(一部の者では1年後に2回目検査を行った)結果,そのうち23名が正常,13名がADであることが判明した.初回の脳波解析で,カットオフ値〈d〉<0.962およびstd>0.024に対して,おのおの約70%の感度と特異性が得られた.したがって,本診断法はADに対する薬物や認知療法等の効果の評価およびADの早期診断に適用できる安価で簡単な方法といえよう.

2001/06/15


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