第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【II B-6】

心理検査

改訂版N式精神機能検査作成の試み
      
 

大阪大学大学院医学系研究科神経機能医学講座
福永知子 鵜飼聡 武田雅俊
関西福祉大学社会福祉学部  小林敏子
甲子園大学人間文化学部  西村健
  

【目的】われわれは,1988年に高齢者の認知機能を多角的に簡便に評価することを目的として『N式精神機能検査』を作成し発表した.以来10年余にわたり,老年精神医学および高齢者福祉の領域などさまざまな臨床場面で用いている.今回,N式精神機能検査標準化に際して用いたデータに,今日までに収集した臨床データを加えて,改良点を検討したので報告する.


【対象】本検査標準化のデータについては,老人施設入所中および医療機関に通院あるいは入院中の,NMスケールによる痴呆の重症度分布が各レベル50名に平均化していた250名に,特別養護老人施設に入所中の軽度痴呆と中等度痴呆の198名を加えた.被験者総数は448名である.


【方法】各医療機関・施設の精神科医または臨床心理士が23の課題項目の予備テストを個別に実施し,別の評定者が同時に臨床観察に基づいてNMスケールを実施した.統計学的処理は数量化理論T類を適用した.


【結果】質問項目の適正化の検討では,N式精神機能検査の結果と非常に近似した結果であり,質問項目は同じく12項目と考えられた.
 しかし,同一質問項目内での段階づけはいままでの臨床的・実際的な観点からカテゴリーをまとめ直して,再生,逆唱,図形模写,書き取りの粗点の選択肢の適正化が必要と考えられた.
 また中等度痴呆と軽度痴呆の被験者が倍増したことが影響しているのかもしれないが,集計表のカテゴリースコアではN式精神機能検査と微細なズレを生じているが,臨床的・実際的な観察に近い非痴呆群と痴呆群の判別分岐点を設定しえたものと考えた.
 今回の再検討では,N式精神機能検査の大筋が適正であったことを支持する結果であった.

2001/06/15


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