第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【II A-23】

ケア

特別養護老人ホームに勤務する介護職員のストレスに関する調査
      
 

大阪大学大学院医学系研究科神経機能医学講座
原田和佳 夏目誠 角典哲 武田雅俊
兵庫県立高齢者脳機能研究センター臨床研究科  数井裕光
国立療養所中部病院  谷向知
大阪府立病院精神科  藤本修
住友病院  多田國利
箕面神経サナトリウム  南野壽重
甲子園大学  西村健
  

【はじめに】今回,特別養護老人ホームに勤務する介護職員を対象に,心身の健康状態を把握し,さらにバーンアウトと自我構造,行動特性,ストレスマネージメント,ライフイベントなどの個人的要因との関連について検討する目的でアンケート調査を実施したので,その結果について報告する.


【対象と方法】対象は,特別養護老人ホーム(7施設)において介護業務に携わっている女性職員〈CS群〉135名(21〜63歳,平均年齢41.4±12.2歳)で,市役所(2市)に勤務する女性職員〈PO群〉218名(21〜60歳,平均年齢39.8±10.9歳)を対照群とした.アンケート調査はすべて2001年1月に実施した.アンケート調査の内容は,東大式エゴグラム〈TEG〉,タイプA行動特性尺度〈TA〉,ストレスマネージメントに関する評価〈SM〉,Holmesの社会的再適応評価尺度に準拠し夏目らが作成した勤労者のストレス評価尺度(ライフイベント法)〈LE〉およびPinesにより開発され宗像らが邦訳,修正したバーンアウトスケール〈BO〉に自覚症状チェックリストを加えたものである.アンケートは無記名とし,さらにプライバシーを遵守する目的で,記入後は各自が封筒に密封したものを回収した.


【結果と考察】PO群と比較してCS群は,TEGのNP,FCが有意に高く,SMが有意に低かった.BOを含めて,他の指標では両群間で有意な差は認められなかった.自覚症状は,CS群では腰痛,口渇が,PO群では不眠,皮膚のかゆみなどが有意に多かった.さらにCS群においてBOと他の指標との関連を検討したところ,BOとTEGのCP,ACおよびLEとの間に有意な正の相関関係を,BOとTEGのNP,AおよびSMとの間に有意な負の相関関係を認めた.
 以上より,特別養護老人ホームに勤務する介護職員は,市役所勤務の女子職員と比べて,バーンアウトの程度に差異はないものの,性格傾向や行動面での相違が認められた.さらに今回の結果より,バーンアウトを引き起こす要因として性格傾向,ライフイベント,不規則な生活習慣など多元的な因子が作用していることが明らかになった.

2001/06/15


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