第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【II A-18】

ケア

身体疾患を合併した痴呆性高齢者の入院についての考察
      
 

大井戸診療所  大沢誠
  

 演者はこの10年間,痴呆性老人を対象とした通所リハビリ(老人デイケア)を実施してきて,痴呆性高齢者が肺炎をはじめとした身体疾患を合併した場合,患者を入院させるか否か,家族とともに悩んできた.痴呆性高齢者は入院によって不眠・せん妄・徘徊・興奮等を起こし,痴呆の悪化のみならず,それらのために治療を目的に抑制され,入院の原因となった身体疾患は治癒したものの,廃用のために歩行ができなくなるといった事態を招くこともまれではない.さらに臥床の結果,最悪の場合には褥瘡の発症をみることにもなる.
 こうしてみると,痴呆性高齢者が身体疾患を合併した場合,在宅での治療を中心にすえることが適当のように思えるが,それは「もう歳だから」「痴呆があるし」といった過少医療につながる可能性もはらんでいて,その決断はむずかしい.そこで,演者は「おやま城北クリニック式在宅医療適応スケール」を援用し,入院か否かの一助としてきたので,このスケールについて紹介する.さらに本スケールによる自験例の検討において,「指導する内容を理解し実施できる」「患者との生活を大切にしている」等の介護者因子が,身体疾患を合併した痴呆性高齢者を入院させるか否かの判断に際し,在宅での治療を選択する要因となることが示唆されたので報告する.

2001/06/15


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