第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【II A-16】

社会対応

虐待により死に至った1例
      
 

介護老人施設しょうわ  佐藤龍司
  

 高齢者人口の増加とともに痴呆,寝たきりなど,手厚い介護が必要となる高齢者も増加している.介護保険制度は,このような高齢者の人権が守られ,適切な介護サービスが提供されるように,社会全体で支え合うことを目的として施行された.
 介護サービスは,介護者に対して身体的な負担を軽減するとともに,「ゆとり」や「余裕」を提供し,精神的な負担も軽減することができる.介護支援相談員による適切なケアプラン作成は在宅介護を継続するうえで非常に重要である.
 しかし介護保険導入後も,経済的負担,地域性,サービス供給量の不足などの理由からサービス利用に至らないことがある.また地域社会から孤立し,むしろ介入(ケアプラン策定,要介護申請など)を自ら拒否することもある.
 今回,79歳,アルツハイマー型痴呆の女性に対して繰り返された身体的,心理的虐待,ネグレクトにより,栄養失調で死亡した1症例を経験した.
 今後増加すると思われる高齢者の虐待を防止するために必要な家族,地域社会,行政,介護保険施設などの連携について考察する.

2001/06/15


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