第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【II A-15】

社会対応

老年期病棟入院患者5年間の動向
      
 

奈良県立医科大学精神医学講座
井上雄一朗 大澤弘吉 法山良信 山忍 森川将行 平山智英
徳山明広 芳野浩樹 中田正樹 林竜也 岸本年史
  

 奈良県立医科大学附属病院精神科病棟は,平成8年4月に改築する際,児童思春期病棟・合併症病棟と12床からなる老年期病棟を開設し精神疾患患者入院治療の機能分担を目指してきた.
 病棟開設以来,5年が経過したため,入院した症例について検討を行い報告する.病棟開設以来,平成12年12月末までの4年9か月間に延べ104名が入院した.男性41名,女性63名であった.入院時の平均年齢は69.1歳であった.退院者は94名であり,退院者の平均在院日数は94.7日であった.退院者のDSM-IV診断は,大うつ病が22.1%,躁うつ病が2.3%,精神分裂病が15.1%,アルツハイマー型痴呆が11.6%,血管性痴呆が18.6%,他の一般身体疾患による痴呆が3.5%,心気症が4.7%,アルコール中毒せん妄が2.3%,一般身体疾患による精神病性障害が9.3%,その他10.5%であった.退院先は自宅が72.1%,一般病院が4.7%,精神科病院が14.0%,老人保健施設が5.8%,特別養護老人ホームが2.3%,死亡退院が1.2%であった.
 本病棟の特徴として,入院患者を痴呆性疾患に限定していないため,平均年齢が比較的若く痴呆患者の全入院患者に占める割合が低かった.治療により入院の原因となった精神症状が改善し元来のADLが良好であったため自宅へ退院した患者の割合が高いと考えられた.
 当日は平成13年3月末までに入院した患者のデータを加え身体合併症と転帰,精神症状や問題行動の改善度,入院期間の予後に与える影響なども考察し報告する予定である.

2001/06/15


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