第16回日本老年精神医学会 演題抄録 |
【II A-12】 |
社会対応 |
スウェーデンにおける若年期痴呆のケアシステム |
スウェーデン・カロリンスカ研究所老年医学部門・高知医科大学神経精神医学教室 |
65歳未満に発症する痴呆性疾患,すなわち初老期痴呆および若年期痴呆(以下,総称して若年期痴呆)は老年期痴呆に比して社会的対応が遅れており,世界各国でそのケアシステムが検討されている.スウェーデンは,最初の若年期デイケア設立が1992年,若年期グループホーム設立が1993年と,比較的早期から対策が立てられてきた.2000年末時点で人口約182万人のストックホルム県にはデイケア施設2か所,グループホーム5か所,ナーシングホーム若年期痴呆棟1か所が運営されている.今回われわれは同地域における若年期痴呆のケアシステムの現状を明らかにする目的で,これらの施設についてその利用者の状況などを調査したので報告する. 【対象・方法】デイケアセンター1か所,若年期痴呆グループホーム2か所およびナーシングホーム若年期痴呆棟1か所の利用者を対象とし,あわせてグループホームについては比較対照として,同一建物内で運営されている老年期痴呆グループホームの利用者を用いた.基本的属性,痴呆性疾患・各種身体疾患等のほか,痴呆度評価にBerger,s senility scale,ADL評価にKatz, ADL indexを用いた.さらに代表的な行動異常をあげ,その有無・頻度を評価した.評価は研究者と複数のスタッフが合議のうえで行った.この研究は,カロリンスカ研究所倫理委員会の承認を得て行われた. 【結果および考察】デイケアセンターでは主として,Berger,Katzともに軽度〜中期の在宅患者を対象としており,活性化と社会との接点をもつ機会をできるだけ多くもつことが強調されていた.グループホームには,同一施設内で最後までケアする施設と,重症化に伴い他の施設に移る方針の施設があった.Berger,Katzでみると,どちらの施設においても大半が中程度〜重度であった.なお,Katz indexは,老年期では多くが順序として歩行の障害のあとに摂食の障害が起こるのに対し,若年期では摂食が障害されたあとも歩行は自立していることが多く,このことは若年期の行動異常が対照の老年期に比し多くみられた結果と関係していると思われる.ナーシングホーム若年期痴呆棟ではそのほとんどの利用者がハンチントン舞踏病と前頭側頭型痴呆で,Katz,Bergerともに重度の患者が多かった.介護用具の開発なども行われていた.発表当日は,在宅ケアに関するその他のサービスの現状を含めてストックホルム地域における若年期痴呆患者のケアシステムを統合的に報告する. |
2001/06/15 |