第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【II A-11】

社会対応

うつ病患者と介護保険のかかわりについて
      
 

東京都老人医療センター精神科
小山恵子 佐藤淳也 井川真理子 塩塚慎一
啓仁会平成クリニック  平沢秀人
国立特殊教育総合研究所  渥美義賢
  

 2000年4月より,高齢者の自立と在宅介護を推進する目的で介護保険の施行が開始された.高齢者の精神科領域で対象となる患者の大部分は痴呆性疾患と思われる.しかし,痴呆に次いで頻度の多いうつ病患者においても,抑うつ症状の慢性化傾向や合併身体疾患などにより,在宅で何らかの援助や介護を必要とする例があると思われる.そこで,当科外来通院中のうつ病患者のうち介護認定を受けた者を対象とし,介護保険サービスの利用状況について検討した.
 当科外来通院中の患者のうち,主治医意見書を作成した者は344名で,このうちうつ病患者は20例(5.9%)であった.平均年齢は78.1歳,男性2例,女性18例と,女性が多かった.日常的に車椅子を使用している例はなく,全例在宅で生活しており,単身生活の者が4例みられた.
 要介護度区分は,要支援から要介護3にわたったが,要支援ないし要介護1と認定された者が15例と過半数を占めていた.この群では,単身生活あるいは高齢世帯に属する者を主とする8例が日常の家事に対する負担感から訪問介護(家事援助)を利用しており,サービスに対して肯定的に評価していた.それに次いで,デイサービスを利用している者が多かったが,このなかではデイサービスへの参加が気分転換になり有用であると評価する者がいる反面,意欲低下や雰囲気が合わないなどの理由で継続的な利用につながっていない者がみられた.現在はまだ少数例であるが,今後うつ状態の程度やADL,生活状況についても検討し,うつ病患者におけるケアニーズを明らかにしていく必要があると思われる.

2001/06/15


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