第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【II A-10】

社会対応

不眠高齢者に対する短時間昼寝と夕方の軽運動の
睡眠・精神健康改善効果
      
 

国立精神・神経センター精神保健研究所老人精神保健部  田中秀樹 白川修一郎
琉球大学教育学部生涯健康基礎学講座  平良一彦 荒川雅志 上江洲榮子
大阪大学健康体育学部健康医学第三部門  杉田義郎
  

 不眠高齢者を対象に昼食後の短時間昼寝および夕方の軽運動の指導を保健行政のなかで介入的に行い,睡眠および精神健康に及ぼす影響について検討した.


【方法】睡眠健康危険度得点に基づいて睡眠健康非良好群と良好群から抽出した各15名ずつ(65〜88歳)を対象とした.研究内容を十分に説明し同意を書面で得たのち,スクリーニングテストを行い,30名の活動量を1週間連続測定した.次に,睡眠健康非良好群に対して4週間の短時間の昼寝,軽運動の生活指導を介入的に行った.運動は夕方,運動指導士の管理下で施行した.運動前後には保健婦が血圧測定を行い健康状態,心理状態の聞き取り調査を行った.介入前後の活動量測定期間中は睡眠日誌,睡眠感,日中の眠気,精神健康度(GHQ)についても測定した. 

【結果と考察】睡眠非良好群は良好群に比べ,中途覚醒が多く,睡眠効率が有意に低いことが判明し,睡眠の質や精神健康が悪化していることが確認できた.次に非良好群を対象に短時間昼寝と夕方の軽運動指導を4週間行い,介入効果を1週間の活動量測定により評価した.中途覚醒の減少,睡眠効率の増加が有意に認められ,夜間睡眠が質的に改善した.夕方の居眠りの有意な減少がみられ,日中を含め就眠前の適正な覚醒維持の確保が有効であった可能性が考えられた.また,睡眠改善に伴って精神健康も有意に改善していた.本研究より,日中の適正な覚醒確保が重要であることが検証でき,今回の介入技術の現場での施行が可能であることが示された.

2001/06/15


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