第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【II A-8】

社会対応

アルツハイマー型老年痴呆患者の要介護度認定
      
 

東京都老人医療センター精神科
井川真理子 小山恵子 塩塚慎一 佐藤淳也 平沢秀人
  

【はじめに】介護保険における主治医意見書では,患者の身体的自立度を8段階(J1,J2,A1,A2,B1,B2,C1,C2)に,痴呆老人の日常生活自立度(以下痴呆問題度と略)を5段階(TUVWM)に分けて評価するようになっている.要介護度認定が痴呆患者の問題行動をどの程度加味しているかを調査するために,この段階分けと実際の要介護度との関係を検討した.


【対象と方法】対象は当院精神科外来通院中で,かつ在宅療養中の,アルツハイマー型老年痴呆と診断されている48例(男14例,女34例)であり,重篤な身体疾患合併例は除外した.それぞれの症例の身体的自立度と痴呆問題度の区分を主治医意見書より調べ,実際に自治体から受けた要介護度との関係を調べた.


【結果】(1)要介護度の分布は,要介護度2が最も多く14例で,次いで要介護度3が12例,要介護度4が9例,要介護度1が8例,要支援3例・要介護度5が2例であった.要介護度の平均値は2.5であった.(2)身体的自立度と要介護度との関係;身体的自立度は単独外出可能の患者(J1,J2)が9例,だれかの介護があれば外出可能の患者(A1,A2)が36例,寝たきりの患者(B1〜C2)は3例であった.J1,J2に評価された患者の要介護度の平均は1.1,A1,A2に評価された患者の要介護度の平均は2.7 B1〜C2の患者の平均は4.0であった.身体自立度が悪くなるにつれて要介護度は高い傾向があったが,A1,A2に評価された患者群での要介護度のばらつきが目立った.不穏興奮,徘徊などで介護負担が最も大きいと思われる例でも,ADLが比較的良好であるために,実際の介護負担より低いと思われる要介護度になる場合があった.(3)痴呆問題度と要介護度との関係;最重度の著しい精神症状や問題行動のある者とされるMの該当者はいなかった.要介護度の平均値はIIでは1.9, IIIでは2.4 ,IVでは3.5 で痴呆問題度が高くなるにつれて要介護度も高かった.

2001/06/15


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