第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【II A-5】

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3D-SSPにおいて初期のアルツハイマー型老年期痴呆の所見がみられた老年期うつ病の3例について
      
 

日本医科大学精神医学教室
下田健吾 木村真人 田村良敦 村田雄一 葉田道雄 森隆夫 遠藤俊吉
日本医科大学放射線医学教室  水村直
  

 アルツハイマー型老年期痴呆(SDAT)では病初期に,抑うつ気分や,意欲の低下など感情および意欲の障害を呈することはまれではなく,大うつ病の診断を満たすものも10-20%の頻度でみられると報告されている.一方高齢者のうつ病において可逆性の認知機能の低下,いわゆるうつ病性仮性痴呆が20-50%の頻度でみられることが知られている.そのため,高齢発症の抑うつが,SDATの初期症状であるのか原発性のうつ病であるのかを鑑別することは,患者の予後や治療方針を立てるうえできわめて重要な問題であるが,臨床症状から両者を区別することは困難なことが多い.近年,SDATの診断にSPECTが広く用いられており,両側頭頂葉や後部側頭葉における血流低下が診断的価値の高い所見とされているが,ごく初期の段階に後帯状回の血流が低下していることも指摘されている.しかしながら,こうした後帯状回の変化などは2次元的断層像から視察的に評価することはむずかしい.そこで今回われわれは123I-IMPを用いたSPECT脳血流画像について,標準脳図譜上に変換して正常データベースと比較し,異常部位を3次元的に表示する,ミシガン大学によって開発された3D-SSPという解析方法を用い,初診時に原発性の老年期うつ病と診断された症例のなかで,3D-SSPによる解析を行ったところ初期のSDATパターンがみられた3例について,その経過も含めて検討を行ったので若干の考察を交えて報告する.今回は予備的な研究ではあるが,老年期うつ病と診断された症例のなかにはこのように初期のSDATが多数含まれている可能性があり,その鑑別に高い精度で3D-SSPを用いた解析が有用である可能性があるとわれわれは考えている.

2001/06/15


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