第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【II A-4】

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SPECTによる年齢別にみたアルツハイマー型痴呆(DAT)の最初期所見
      
 

国立精神・神経センター武蔵病院
山下典生 朝田 隆 木之下徹 松田博史
大西隆 坂本茂貴 中野正剛 宇野正威
  

【はじめに】MinoshimaらによりDATの最初期を示唆する脳機能画像所見は帯状回後部に現れると示された.ところが多数の最初期DATをSPECT画像解析したところ発症年齢と性により相違を見いだしたので報告する.

【対象】対象者は記憶障害のみの認知機能障害で当院を受診し,その後2年の追跡期間内でprobable AD(NINCDS-ADRDA)と診断された105人(平均年齢±標準偏差71.2±8.68歳,男性/女性=51/54,MMSE=26.0±1.59)である.解析には初診時のデータを用いた.

【方法】99mTc-ECDをトレーサとしてSPECTを施行し脳血流量を推定した.年齢(70歳をカットオフ値)と性別に層別化したのち,SPM法により年齢と性をマッチさせた正常者と比較検討した.

【結果】70歳未満では男女とも両側上下頭頂小葉,女性ではさらに両側後部帯状回と楔前部,右側角回から中側頭回を経て下側頭回までの領域で血流低下が認められた.これは,Minoshimaらの報告とほぼ一致する.ところが,70歳以上では男女とも両側海馬,海馬傍回,内側後頭側頭回,女性ではさらに前部帯状回,左側弁蓋部と中心前回,右側下前頭回と上側頭回での血流低下を認めた.なお,50歳以降10歳ごとに区分しあらためて検討したところ,年齢による差異は再確認された.

【考察】広義のDATにおいて最初期病変は発病年齢に応じて異なることが明らかとなった.なお,Minoshimaらの報告の対象8人は平均年齢69±4.6歳であり,比較的狭い年齢層に限られている.すでに発病年齢により病理学的所見が異なることが知られており(水谷:内科,77(5):810-816,1996),本結果と整合性があると考えられる.また,各年齢層内で性別に分けて検討したところ,最初期所見の分布にも差異が認められた.

2001/06/15


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