第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【II A-2】

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Xe-133吸入法SPECTによるDonepezil投与前後の
局所脳血流量について
      
 

山形大学医学部精神神経科
川勝忍 和田正 林博史 鈴木春芳
奥山直行 大谷浩一 十束支朗
  

【目的】わが国でもdonepezilがアルツハイマー型痴呆の治療として用いられているが,全般改善度や認知機能検査以外に治療効果の客観的指標が乏しいのが現状である.今回,このような指標として局所脳血流量の定量が役立つかどうかについて検討した.

【方法】対象は軽症〜中等症のアルツハイマー型痴呆10例,平均年齢67.4±8.8歳(52-78歳),donepezil投与開始前のMini-mental state examination得点は22.5±4.3点(16-28点)であった.局所脳血流量は,Xe-133吸入法によりCERASPECT 3000(Digital Scintigraphics Inc.)を用いて測定した.測定時期は,denepezil投与前と,外来通院患者8例では投与12週後,入院患者2例では投与4週後に測定した.局所脳血流量については,OM+40mm前後で前頭葉,側頭葉,後頭葉,OM+70mm前後で前頭葉,感覚運動野,頭頂葉に関心領域を設定して比較に用いた.投与前後の治療効果の判定には,全般症状評価と認知機能の検査として,Alzheimer,s disease assessment scale(ADAS)およびTrail Making Test A(TMT-A)を用いた.

【結果】全般改善度では,有効・やや有効が6例,無効4例であった.認知機能については,投与開始前のADAS得点は15.1±8.1点,投与後は13.6±6.8点で軽度に得点は改善していたが有意差はなかった.TMTでは投与前124±81秒,投与後92±53秒で,改善傾向(p=0.096)を認めた.局所脳血流量では,全脳平均では投与前が46.2±3.9ml / 100g / min,投与後は45±7.2ml / 100g / minで有意差はなかった.投与前の局所脳血流量は,両側側頭葉および頭頂葉で対照群より低下していたが,投与前後で比較すると,前頭葉,側頭葉,頭頂葉,感覚運動野,後頭葉いずれの部位においても投与前後で有意差はなかった.有効・やや有効例と無効例とで,投与前後の脳血流量の増減との間に一定の傾向は認められなかった.

【結論】12週のdenepezil投与で,局所脳血流量は有意な変化は示さず,個々の症例でも,治療効果の有無との対応も認められなかった.したがって,12週程度の比較的短期間のdonepezilの効果判定の客観的指標として,脳血流量測定は必ずしも有用ではないと考えられた.

2001/06/15


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