第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【II A-1】

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知能障害の部分的改善を認めた低血糖脳症の1例
      
 

秋田県立リハビリテーション・精神医療センター
佐藤隆郎 横山絵里子 清水哲哉 高橋祐二
佐々木佳子 草薙宏明 小畑信彦 飯島壽佐美
  

【はじめに】低血糖による後遺症としての知能障害は永続性であることが多いとされるが,発症後6か月以降に知能障害の部分的改善を認めた低血糖脳症の1例を経験したので報告する.

【症例】60歳,女性

【現病歴】平成11年9月26日に夕食を食べずに飲酒して就寝,翌朝無反応状態でA病院救急外来に搬送され,到着時血糖17mg/dl,A病院に入院.その後意識回復したが,コルサコフ症候群を呈した.11月1日に大腸がんが発見されて,12月6日手術を受けた.その後DICになったが回復.1月中旬から不眠と夜間の大声があり,ハロペリドールとチアプリドが処方されて落ち着いた.痴呆を疑われて,平成12年3月2日に当センター痴呆病棟に入院.

【当センター入院後の経過】3月3日BUN/CRTN 25.1/1.56と脱水による腎機能障害あり,ラシックス<MG CHAR="○","R" SIZE=80.0>を中止したところ4月4日に腎機能正常化.当センターでは不穏なくむしろ意欲低下と不眠がみられた.薬物療法により5月には不眠が改善して,その後意欲も改善した.5月下旬から筋力低下と巧緻性低下に対して,歩行訓練などの理学療法と巧緻性訓練などの作業療法を本格的に開始した.6月21日A病院で内視鏡施行され胃出血性びらんを指摘され,スクラルファートとレバミピド追加して軽快.平成12年11月18日自宅退院.

【心理検査の結果】第1回(平成12年5月22-25日):HDS-R21点,MMS23点,WAIS-R:VIQ116 PIQ87 TIQ104.WMS-R:全般的記憶67,言語性記憶67,注意・集中力113,視覚性記憶82,遅延再生測定不能.第2回(平成12年11月8-13日):HDS-R19点,MMS19点,WAIS-R:VIQ116 PIQ97 TIQ109.WMS-R:全般的記憶89,言語性記憶78,注意・集中力114,視覚性記憶110,遅延再生測定不能.第1回と比較して第2回で作業能力の向上と即時記銘の回復を認めたが,遅延再生の改善は認められなかった.

【画像所見】頭部MRI(平成12年3月6日):海馬領域はT2WIでやや高信号域,FLAIRでは高信号域.その後の頭部MRIでも同じ所見.ECD-SPECT(平成12年5月19日):前頭葉の広範な領域に集積低下を認めた.ECD-SPECT(平成12年11月13日):前頭葉の集積低下の改善を認めた.

【考察】作業能力の向上と即時記銘の回復と前頭葉の集積増加が平行して観察された.リハビリテーションと身体疾患の治療が有効であった可能性がある.

2001/06/15


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