第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【I B-14】

治療

突進様歩行および前傾姿勢等の症状に対し
pergolide mesilateが著効を示した90歳女性例
      
 

東京慈恵会医科大学精神医学講座  西村浩 臼井樹子 笠原洋勇 牛島定信
  

 突進様歩行および前傾姿勢などの症状が出現した90歳女性例に対し,pergolide mesilateを投与し,これらのパーキンソン様歩行症状の著明な改善が得られ,ADLが目覚しく改善しQOLも向上した経験を報告する.


【症例】1911年生まれ,女性
【主 訴】食欲不振,不眠
【現病歴】1988年うつ病にて2か月間の入院により改善し以後は穏やかに生活していたが,1997年10月親しい友人が死去,以後しだいに抑うつ的となり,1998年2月嘔吐を繰り返して以来,食欲不振が出現し,「生きていても仕方ない」「どうしてよいかわからない」「みんなに迷惑をかける」「お金がなくなってしまう」等の言動も出現したため1998年4月よりmianserin 20mg投与となるも効果なく,1998年5月精神神経科に紹介初診となった.
【既往歴】高血圧,狭心症,心房細動
【家族歴】5人兄姉末子,父は大酒家
【性格】明朗
【生活歴】尋常小卒,元タイピスト,夫は行方不明,68歳より養護老人ホームにて生活
【身体所見】体重47.5→42.5kg/150cm


【経過】うつ病との診断により,服用中のmianserin 20mgに加えsulpiride 100mgおよびmaprotiline 30mg投与開始,2週間後にはsulpilide 150mgとしてmianserin 20mgおよびmaprotiline 30mg継続したところ,睡眠ならびに食欲が改善し始め,9月には体重も50kgまで増加した.しかし10月から主訴が再び出現したためsulpiride 150mg,maprotiline 20mg,mianserin 30mgに加えtrazodone 50mgを追加したが,改善は得られずに経過していた.1999年1月からは始歩困難ならびに小刻み歩行が出現したため,amantadine 100mgを追加し,150mgまで増量したが,前傾姿勢および突進様歩行も出現したため,5月よりpergolide mesilate150mgを開始し2週間ごとに増量した.この間に抗うつ薬はfluvoxamine 25mg,trazo-^ndone 75mgおよびethyl loflazepate 2mgと調整し,しだいに新聞やテレビを見たり,入浴も介助なしにできるなどADLの改善が認められ,こうした精神症状の改善に次いで,pergolide mesilate 450mgでは歩行障害も改善して美容院へ単独で外出することが可能となった.11月からはpergolide mesilate 750mgまで増量しADLは自立して洗濯も可能となり,精神症状も改善したまま経過しており,嘔気および便秘などの副作用は認められていない.

2001/06/13


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