第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【I B-12】

治療

高齢者の大腿骨骨折について
      
 

東京武蔵野病院・聖母女子短期大学  金川英雄
東京武蔵野病院  辰野剛 虎岩武志 原尚之 木崎英介
  

【はじめに】高齢者の大腿骨骨折はどこの病院施設でも頭の痛い問題である.当院は精神病院ではあるが,精神科合併症患者を扱う42床がある.内科,外科,整形外科があり,チーム医療を実践している.今回平成6〜10年の合併症病棟の入院患者分析を行い,大腿骨骨折を中心に考察した.


【方法・結果】合併症病棟の平成6〜10年の入院患者数は,94年が241例,95年208例,96年199例,97年293例,98年102例で,計1,043例を調査分析した.1)入院患者の平均年齢は毎年60〜64歳で,平均入院日数は94年から順に50.2日,67.4日,51.2日,39.7日,29.2日であった.2)『都合併』として他の都内精神病院の身体患者をみており,全体に右肩上がりで,増加傾向にある.医療保護は7例,25例,38例,40例,11例で97年には措置患者も2例入院している.高齢者の施設からの依頼も増加しているが,任意入院が多い.3)精神科疾患別の内訳は,痴呆群182例,精神分裂病圏527例,感情障害131例,てんかん20例,神経症圏22例,アルコール依存症状群30例,人格障害18例(6例は大量服薬),精神発達遅滞18例などであった.4)整形外科系疾患434例で,骨折は143例,そのうちの大腿骨部位はちょうど100例で,65歳以上の高齢者が多数を占めた.


【考察】1)大腿骨部位の治療をする高齢者の精神症状は,痴呆に伴うものであった.精神症状が軽い患者は一般の整形外科で治療されていると思われる.高齢社会で大腿骨骨折が多くなるにつれて,ある程度の設備と看護システムをもった治療空間が必要になり,はからずも当院の合併症病棟がその一翼をになった.2)病歴をみると,必ずしも歩行障害が目立ち注意が向けられていた人に起こるわけではなく,在宅,病院,施設ではADL良好にもかかわらず,突然の転倒などで骨折する例が多かった.3)精神科薬を服用している患者の場合,その量は必ずしも多いとはいえなかった.4)5年間でMRSA 18例で増加傾向にあり,その対策や高齢者の徘徊などの問題で,閉鎖空間や個室を増やす必要性があり,98年7月に新棟を建設し病棟を移し治療構造を改善した.5)DMなどがあり骨折治療中にも肺炎,イレウスなど併発や安静を保てない患者が多く,丹念な治療が必要である.6)少しずつではあるが,非痴呆性の高齢精神障害者の骨折も増加している.7)処遇も含めた転院依頼などもあり,時に困惑することもある.

【結語】症例を追加して具体的な問題に当日言及したい.

2001/06/13


 演題一覧へ戻る