第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【I B-11】

治療

精神科における「もの忘れ外来」
    
 

福島県立医科大学医学部神経精神医学講座
小林直人 田子久夫 森由紀子 黒須貞利 丹羽真一
  

 高齢者の人口増加に伴い,老年期に特有な疾患,とくに痴呆医療に関するニーズが年々高まってきている.記憶障害「もの忘れ」は痴呆の主たる症状であり,他の疾患との鑑別も含め早期に治療を開始することが望まれる.現在痴呆の臨床を行っているのは,老年内科や神経内科,精神科などであるが,もの忘れを主訴に精神科を受診する高齢患者も少なくない.しかし,精神科受診については,近年になって一般的に浸透してきてはいるものの,偏見の対象となることもある.このような背景から,われわれは1998年10月に「もの忘れ外来」を開設した.以来200人以上の新患受診があり,うちアルツハイマー型痴呆を含め痴呆関連疾患が約2/3を占めていた.また,受診者の大多数は65〜85歳までの老年期の患者であった.加えて,初診時に受診に至った理由や家族関係等のアンケート記録をお願いし,家族の率直な意見をとりあげ,今後の「もの忘れ外来」のあり方について検討してみた.このアンケートによれば,約半数の患者や家族が精神科という診療科受診に対してためらいを感じていたことがわかった.しかし,実際受診してみたあとの感想からは精神科を偏見するような内容のものは少なく,診療内容にも満足したという意見が多くみられた.今後,痴呆専門外来に求められる役割としては,知的機能障害の原因の検索や評価として各種検査を施行することはもちろんのこと,身体管理においては内科をはじめ各診療科との連携,介護の問題では専門知識をもつソーシャルワーカー等の関与が求められる.かつ,患者や家族が容易に相談ができ,検査や指導が受けられるシステムづくりが必要となろう.

2001/06/13


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