第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【I B-10】

治療

アルツハイマー型痴呆性患者へのアートセラピーの効果
    
 

国立精神・神経センター武蔵病院  松岡(服部)恵子 朝田隆 宇野正威
  

【背景】アルツハイマー型痴呆性患者(DAT患者)に対する非薬物的治療法として,芸術療法が注目されているが,その効果は実証されていない.

【目的】DAT患者においてアートセラピーによる認知機能の変化があるか知ることである.

【方法】DAT患者14名(平均年齢72.3歳(57-85歳),M:F=10:4,entry時の平均MMSE=23.3)に対し,「造型療法」「音楽療法」「運動療法」のうち2つを行い,その効果を介入前後のMini-Mental State Examination(MMSE),改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R),Wechsler Adult Intelligence Scale-Revised(WAIS-R)により評価した.また,アートセラピーを行わないDAT患者9名(平均年齢71.4歳(52-82歳),M:F=5:4,entry時の平均MMSE=21.0)を対照群として同様の検査を行った.

【結果】アートセラピー群(n=14)の介入前後の検査結果を比較すると,MMSEは23.3から22.6へ,HDS-Rは19.9から19.5へ,IQは108.6から109.6に変化していた(いずれも有意差なし).下位検査では「数唱」で上昇傾向(p<0.10)がみられた.前後の得点差を,アートセラピー群と対照群とで比較したところ,「符号」でアートセラピー群が向上した傾向,「単語」で低下した傾向(p<0.10)がみられた.アートセラピー群を「造型・音楽群(n=3)」「音楽・運動群(n=5)」「造型・運動群(n=6)」の3群に分類し介入前後の検査得点を比較すると,「造型・音楽群」では「絵画配列」「理解」(いずれもp<0.05),「動作性IQ」(p<0.10)において得点が向上していた.「音楽・運動群」「造型・運動群」では有意に向上した下位検査はなかった.

【考察】音楽療法と造型療法の双方を行ったDAT患者において向上が目立っていたことから,アートセラピーによる効果は,その内容や頻度も合わせて評価していく必要がある.

2001/06/13


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