第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【I B-8】

治療

薬物治療が困難な初老期・老年期緊張型精神分裂病に
対するECTの短期的治療効果と6か月再燃率
    
 

東北大学医学部精神医学教室
鈴木一正 粟田主一 海老名幸雄 神垣嘉光 小泉弥生 山下元康
東北大学医学部救急医学教室  佐藤敏光
  

【研究背景】ECTは,薬物治療が困難な緊張型分裂病に対する有効な治療法として認められている.今回われわれは薬物治療抵抗性,不耐性または身体的切迫性のために1コースのECTの適応となった初老期・老年期緊張型分裂病について,ECTの短期的治療効果と6か月再燃率を調査した.


【対象と方法】
DSM-Wの緊張型分裂病の診断基準を満たす50歳以上の症例で1998年以降当科において,ECTコースを実施した連続症例について,ECT前後の臨床症状の推移をBPRS(18 items,rate 0-6)で評価し,平均改善率・反応率・6か月再燃率を算出した.反応率の算出にあたっては,ECT直後のスコアが1週間連続して25以下であるものを反応例とし,再燃率算出にあたっては反応群の追跡調査でBPRSが連続3日間37以上になった場合を再燃と定義した.ECTの実施に際しては,本人または家族から文書と口頭によるインフォームド・コンセントを得た.またECTは静脈麻酔薬と筋弛緩薬を用いる修正型ECTを実施した.


【結果】
現在までのところ,6か月間の追跡調査が終了している5例(男1例,女4例,ECT実施年齢51-74歳,平均64歳)において,BPRSの平均得点はECT前で59.8,直後で13,スコアの平均改善率は77.2%,反応率は100%(5例中5例),6か月再燃率は60%(5例中3例)であった.再燃までの期間は平均23.3日であった.


【結論】
薬物治療が困難な初老期・老年期緊張型精神分裂病において,ECTは高い短期的治療効果を発揮するが,治療後6か月間の再燃率は高い.薬物治療が困難な緊張型分裂病に対する治療戦略の確立には,ECT後の易再燃性の病態解明とともに再燃予防を目的とする寛解維持治療法の開発が必要である.

2001/06/13


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