第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【I B-5】

疫学

総合病院精神科における老年紹介患者の現況
    
 

聖母会天使病院精神科神経科  松原良次 伊藤ますみ
市立札幌病院静療院  藤井明人
北海道大学大学院医学研究科神経機能学講座精神医学分野  小山司
  

【目的】高齢化社会の到来により,総合病院各科を受診する患者のなかで老年患者の占める比率が高くなっており,それに伴い種々の精神医学的問題のために,各科から精神科へ紹介される老年患者も増加している.そこで,聖母会天使病院精神科神経科を院内他科からの紹介で受診した65歳以上の老年患者の現況について,コンサルテーション・リエゾン精神医学の観点から検討を行った.なお,当科は11診療科,298床を有する民間の総合病院内に設置された無床の精神科である.


【対象と方法】平成9年4月1日〜平成12年3月31日までの3年間に,院内他科からの紹介で当科を初診した65歳以上の患者を対象とし,診療録に基づき,調査,集計した.


【結果と考察】65歳以上の紹介患者は全紹介患者の半数を超える256名であった.男性より女性が多く,80歳以上も2/5を占めた.紹介科入院中の患者が外来患者の5倍以上と多く,入院患者は外来に比べて年齢が高かった.紹介科外来では呼吸器内科,循環器内科,消化器内科など,入院では各内科に加え,整形外科,外科などから紹介されていた.ICD-10分類による精神医学的診断は,紹介科外来ではF4「神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害」,入院ではF0「症状性を含む器質性精神障害」が半数以上で,F05「せん妄」が最も多かった.おもに夜間の不眠や徘徊など病棟内の問題行動や,検査や治療に対して十分な協力が得られないことなどが紹介の理由となっていた.初診3〜6か月後の転帰は,不変と軽快がほぼ同数認められた.以上から,院内他科からの紹介で精神科を受診する患者は,重篤な身体疾患を合併している器質性精神障害の高齢者が多く,総合病院においてコンサルテーション・リエゾン精神医学を円滑に行うためには,老年精神医学が重要な役割を果たしていることが示唆された.

2001/06/13


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